ところが、主婦のパートの場合、150万円までは配偶者特別控除があるので旦那さんの税金が増えることはありません。したがって103万円で働き控えをしているパート労働者の中には、税金が増えてしまうと誤解しているケースも多いと考えられます。
一部、公的な制度とは別に、企業内部で独自の扶養手当があり、その基準が103万円になっているケースが見受けられます。これはあくまで企業のプライベートな制度ですので、公的な制度とは関係ありません。
問題を整理すると、103万円の壁というのは、親の扶養に入っている学生で、かつアルバイトをしており、平均値を大きく超える金額まで働きたいと思っている人に限定された話ということになります。
国民民主党は、所得税の基礎控除額を大幅に引き上げる形で、高所得層の人も含めて大規模な減税を実施すると同時に、103万円の壁を解消するプランを掲げていますが、政府の方は、学生の親の扶養控除の基準額を引き上げるという案を提示し、国民民主党と交渉を行っています(2024年12月11日、自公国の3党は103万円の壁について178万円までの引き上げを目指すことで合意しましたが、具体的な金額はまだ決まっていません)。
減税の是非はともかく、学生の働き控えを解消するという点に限って言えば、基礎控除を引き上げるのではなく、扶養控除の基準額を変更すればほぼ解消に向かいます。さらにこのプランであればかかるコストは数百億円程度に収まると思われますので、非常にリーズナブルと言えるでしょう。
加えて説明すると、働いている学生さんに対しては勤労学生控除という制度があり、130万円までは本人の所得税が免除される制度もあります。この制度を使えば、もともとごくわずかではありますが、本人の所得税もかかりませんから、130万円まではバイト時間を増やしても税金を支払う必要はありません。
103万円の壁については、実際には存在しないという意味で一部の論者から「幻の壁」という指摘も出ていますが、制度の実情を考えると、確かに103万円の壁はあってないようなものだと考えた方が良さそうです。
写真/Shutterstock
<前回の記事>
「「投資を始めるならいつ?」の問いに、経済評論家の回答は? 投資を30年近く続けて分かった“銘柄より100倍大切”なこと【45歳からの資産形成・第2回】」>>
- 1
- 2
Comment