塗師という作り手でありながら、熟練の使い手でもある赤木明登(あかぎあきと)さん、ギャラリストであり、洗練された選び手でもある赤木智子さんが、いま、行く価値のあるギャラリーについて考えた本が5月25日に、『うつわを巡る旅』として刊行されました。

日本全国(倉敷~松江~能登~金沢~高松~高知~郡山~会津~新潟~高崎~川越)を巡って、ふたりが気に入ったところ、新しい発見があるところ、おもしろいものが見つかるところ・・・・・・を紹介していますが、ここでは能登の情報をちらりとご紹介。


次の旅は金沢の先へ。能登で待つ
楽しい骨董に新しい民藝

智子さんがお茶を習っている街、七尾のおすすめのひとつは、「暮らしの道具店 歩らり(ぶらり)」さん。万年筆をモチーフにした古い文房具店を改装したギャラリーは、一階が暮らしまわりの雑貨やうつわ、二階に古道具が並んでいる。

「ダンナと一緒にほじくり出すと、ついついほしくなってしまう。本日も伊万里のちょっとゆるい感じの絵がついた蓋付き飯椀とお揃いのそば猪口をふたりで見つけてしまったぞ。ついつい見ているうちに数も揃えたくなってしまう。でも、この“ついつい”というのが大事。ああだこうだという理屈抜きに、ウチに連れて帰りたくなるような、頭の中ではこのうつわをじゃーんと並べておいしいモノを盛りつけた映像がバッチリと浮かび、ついついほしくなってしまう感じ」(P66~67)

「歩らり」には、新しいものから骨董まで、さまざまな由来のものが混在。探し出す楽しみを味わえる。写真の飯椀は結局、10客揃えで赤木家へ。
地元、輪島塗の木地屋、四十沢(あいざわ)宏治さんによる木地のまま使えるお箸。上が黒檀、下が鉄刀木。ともに木を磨いただけの仕上げが新鮮。
 

暮らしの道具店 歩らり
石川県七尾市一本杉町32-1
tel. 0767-52-3630

 

能登半島の先端、珠洲のギャラリー、「舟あそび」。店主の舟見有加さんの目で選ばれたのは、「日本の民藝の影響を受けていると思う」(明登さん)というバーナード・リーチに縁のあるデンマークの作家、キースン・スロースさんのカップ。
地元の古民家を改装したギャラリー。ゆったりしたスペースに陶器や金工、ガラス、テキスタイルなどが展示されている。地元の珠洲焼はパートナーの陶芸家、篠原敬さんのものを常設。雪の季節はお休みしているのでご注意を。

Gallery 舟あそび
石川県珠洲市若山町出田41-2
tel. 0768-82-3960
※冬期11~4月は休業

 

 
 

『さいはてにて』という映画のモデルにもなった珈琲豆の焙煎所によるカフェ。常時14種類の新鮮な豆を販売している。オーナー二三味(にざみ)葉子さんの姉、浩美さんが作るケーキは週末には5~6種類揃う。テイクアウトもOK。

二三味珈琲café
石川県珠洲市飯田町7-30-1
tel. 0768-82-7023


新刊『うつわを巡る旅 ほしいものはどこにある?』には、能登のほか、金沢、高知、郡山……など二人が全国を巡って見つけた、いま、行く価値のあるギャラリー、書店などが多数紹介されています。次の旅行の計画に、地元の再発見に、ぜひご活用ください。

次回は、倉敷編をご紹介します!

 

<新刊紹介>
『うつわを巡る旅 ほしいものはどこにある?』

赤木明登 赤木智子
A4 176ページ ¥1600(税別)
講談社  
ISBN978-4-06-299873-4

赤木明登/あかぎあきと
塗師。岡山県生まれ。編集者を経て1988年に輪島へ。輪島塗の下地職人・岡本進のもとで修業後、1994年に独立。以後、輪島でうつわを作り続け、各地で個展を開催。現代の暮らしに息づく「ぬりもの」の世界を切り開く。著書に『美しいもの』(2006)、『美しいこと』(2009)、『毎日使う漆のうつわ』(2007/以上すべて新潮社刊)ほか。

赤木智子/あかぎともこ
エッセイスト。東京都生まれ。現代陶芸を扱うギャラリーで働いたのち、1987年に明登氏と結婚。ともに輪島へ。工房のおかみさん業の傍ら、2005年より、自身が使う食器や衣類などを展示販売する「赤木智子の生活道具店」を各地のギャラリーで開催。著書に『ぬりものとゴハン』(2006/講談社)、『赤木智子の生活道具店』(2010/新潮社)、明登氏との共著で『うちの食器棚』(2013/新潮社)。


撮影/青砥茂樹(講談社) 構成・文/山本忍(講談社)