23

【マディソンブルーディレクター中山まりこ】「おしゃれ迷子はチャンス」の真意とは?

0

人生の節目に訪れた“おしゃれ迷走期” 

【マディソンブルーディレクター中山まりこ】「おしゃれ迷子はチャンス」の真意とは?_img0
Mariko Nakayama 1964年生まれ。’80年代後半、NY在住時に雑誌『Interview Magazine』等でスタイリスト、雑誌のコーディネーター、NOKKO全米デビューのディレクターとして活躍。’93年に帰国、広告・雑誌・音楽のスタイリングを手がける。2014年より「マディソンブルー」ディレクター。

きっかけは1年ほど前、南の島でのバカンスから帰ってきたときのこと。いつになく肌の衰えを痛感し、髪の力も落ちたことに愕然とした。「髪型は全身のバランスをとる部分だから、髪が決まらないと洋服も迷子になってしまいます。日々ぶつぶつ言いながら、鏡の前で洋服をとっかえひっかえ。それでも何を着たらいいかわからなくて、家を出られないことさえあるんです」 

驚いた。自分が心地よくいられる揺るぎないスタイルを手にした人がなお、そこまでおしゃれに惑うことがあるとは! しかし、これまで当たり前に着ていた服にふと違和感を覚え、試行錯誤のうえ解決法を見出したところで、またわからなくなって道を見失う時期がやってくる。中山さんとて、実のところその繰り返しなのだという。
 
30代初めで出産した後、定番だったリーバイス501が似合わなくなった。まいったけれど、そのときの迷いはいつの間にかなんとなく解消。40代になって、大好きだった黒が似合わなくなった。ちょうど子どもの中学受験の時期と重なり、「何を着ていいかわからない」悩みに拍車がかかった。少し明るめのシルバーグレーを初めて手に取り、自分らしくいられるネイビーのスーツを納得がいくまでとことん探した。

【マディソンブルーディレクター中山まりこ】「おしゃれ迷子はチャンス」の真意とは?_img1
ジャケット、スカート/マディソンブルー 時計/カルティエ 靴/セリーヌ

「誰かと違うことが自分のスタイルではないし、だからといって一緒がいいわけじゃない。私、迷っているときにやってはいけないのは、安易にファストファッションなどに逃げることだと思います。ほどよくトレンディなスタイルをとりあえず試してみても、一瞬気分は上がるかもしれないけれど、なんの解決にもならない。特に40代は、トレンドの取り入れ方には注意を払うべき。トレンディなものほどスタイルのない人に見せてしまいますから。だからといって、じゃあ、すべてハイブランドの高い服にしなさいというわけではないんです。ただ、上質な服は知っておいたほうがいいと思います。たとえ見えない裏側でも、素材も縫製も細部にまでこだわった服とはどういうものなのか。今まで足を踏み入れたことのない店にも出かけて試着してみるのもいい。試して、試していいものを体で知る、自分の心にも体にもぴたっとくる服を見つける努力を惜しんではいけません。迷いから簡単に脱出できるとは思わないで」

たびたびの迷走期をくぐり抜けてきた中山さんならではの、力のある言葉。さらに、「迷子になったら、ガツガツ迷う(笑)。あちこちぶつかって這い上がろうとしたときに、きっと新しい自分が見つかると思う。だから、迷子は〝チャンス〟でもあるんです」と、これは、迷いの只中にある自分へのエールでもあるのだろうか。「自分が着てきたもの、見てきたものの中にもヒントがあるかもしれない」とも言う。洋服にまつわる数多の思い出や鮮明な記憶が、いくつもの引き出しにしまわれている中山さんには及ぶべくもないけれど。「もしおしゃれを褒められたら、覚えておいたほうがいいですよね。『そのスカートいいね!』と言われたら、『ありがとう』って、ちゃんと受け止める。そうすることで自分の中に留めることができるんじゃないでしょうか」ささやかな心がけが、明日のおしゃれにつながっていく。
 

中山まりこさんの写真一覧はこちら>> 

※この記事は書籍『おしゃれコーチング』(講談社刊)から抜粋したものです。

【マディソンブルーディレクター中山まりこ】「おしゃれ迷子はチャンス」の真意とは?_img2
 

<新刊紹介>
『自分のスタイルが見つかる おしゃれコーチング mi‐mollet BOOKS Vol.1』

ミモレ編集部 1500円(税別) 講談社

揺るぎない自分のスタイルがあると、とても生き易く、楽しい。でもそれを見つけるのは難しくて、日々トレンドや体型の変化などに振り回されてしまう…。スタイルのあるおしゃれな人になるには、どうしたらよいのか。ウェブマガジンとして、読者の悩みに寄り添い続けてきたからこそいきついた、ミモレならではのファッションブックを刊行。「紙のミモレが見たい」という読者の熱い声に応えた、待望の書籍第一号です。

【はじめに】白シャツとパール、そして私のスタイル
ミモレの大草直子編集長スタイリングにより、カジュアルからドレスアップまで白シャツのスタイルを見せます。
【第1章】インタビュー スタイルのある人ってどんな人?
・女優・板谷由夏さん
・「マディソンブルー」ディレクター中山まりこさん
・「ボンマジック」故・白井多恵子さん
・「CHICCA」ブランドクリエイター吉川康雄さん
【第2章】スタイルのある女性のリアルコーディネート
・熊倉正子さん
・ミモレ連載スタイリスト 田中雅美、斉藤美恵、福田麻琴、望月律子、室井由美子 スナップ&インタビュー
・おしゃれのヒントは街角にある!「SNAP!SNAP!」総集編
白シャツ、ジャケット、デニム、スニーカー、トレンチコートなど、流行に左右されないアイテム別に、ミモレのスナップの中から、人気のあったコーディネートを紹介します。
【第3章】コーチングシート(32P)
読者自身が書き込むコーチングシート。書き進めながら、最後には自分のスタイルのヒントを見つけられる内容。監修は人気スタイリストでミモレ編集長の大草直子。

構成/ミモレ編集部
撮影/目黒智子
取材・文/河合映江
ヘアメイク/小澤実和
 

 

 

前回記事「板谷由夏のおしゃれ哲学「20代の頃は女らしさと折り合いがつかなかった」」はこちら>>