『ダンガル きっと、つよくなる』
監督:ニテーシュ・ティワーリー
出演:アーミル・カーン、ファーティマー・サナー・シャイク、サニャー・マルホートラ 他
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/ギャガ 4月6日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国公開
©Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016


女子レスリング界のニュースが連日聞こえてくるなか、インドから姉妹の実話をもとにしたレスリング・ムービー『ダンガル きっと、つよくなる』が届きました。ダンガルとはインドの言葉でレスリングのこと。かつてレスリングの国内チャンピオンだった男は金メダルを獲る夢を息子に引き継ぎたいと願っていたものの、生まれたのは娘ばかり。男子とのケンカに負けない長女のギータと次女のバビータにセンスありと見抜いた父は、ふたりを立派なレスリング選手に育てるべく、強引に猛特訓を始めます。手作りの道具とリングで娘をしごく姿は、まさにリアル『巨人の星』。(木でできた“重いコンダラ”も出てきます!)。

 

思春期の女の子が髪の毛を短く刈られ、男子の服を着せられて街の人にも笑われ、反抗しないわけはなく……。ある日、結婚パーティに出かけて弾けたことをこっぴどく叱られ、もうヤダ! と音を上げそうになった姉妹に、友達がこんな言葉をかけてくれるのです。「普通の父親は娘に料理や掃除を教えて家事を押し付け、14歳になったら知らない人のところに嫁がせ、厄介払い。私もあんなお父さんがほしい。娘の未来のことを考えていると思う」と。次第に力をつけていったギータは男子の大会に出場したり、父から離れて新たな指導者のもとで練習を始めたり。姉妹と父への妨害や嫉妬、陰謀もある状況が、軽快な音楽も交えながらテンポよく描かれていきます。

 

大切な試合の前に、父が娘にかける“本当の敵”についての言葉を聞いて涙腺崩壊。十代の女の子に背負わせるにはあまりも重い言葉だよ、お父さん! とも思いましたが、それを全身で受け止めてリングに向かう姿にまたまた涙腺崩壊。試合シーンはオリンピック観戦級の臨場感で(トレーニングを積んだ女優さんたち、すごすぎます!)、フェアな闘いが与えてくれる高揚感も手伝い、ガールズパワーに思わず拍手喝采。世界中のすべての女の子の権利と未来を祝福するような、名シーンになっています。製作・主演はインドの大スター、アーミル・カーン。インドではこの映画が大ヒットした影響で何千人もの少女がレスリングを始めたそうです。

 

PROFILE

細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
細谷さんの他の映画記事を見る