近年、日本人の寿命が長くなっていることから、高齢になってからの収入をどう確保するのかが課題となっています。かつては手厚い年金がありましたから、ある程度の貯金があれば、年金で何とか暮すことができましたが、これからの時代はそうはいきません。

政府は現在、企業に対して何らかの形で65歳まで雇用することを義務付けていますが、近い将来、これを70歳まで延長し、事実上の生涯労働に移行する計画といわれます。希望すれば70歳まで会社にいられるわけですが、問題は、高齢者に支払う給料をどう捻出するのかということです。

多くの日本企業は終身雇用制度を採用しています。単純に考えて企業の定年を引き上げれば、新規採用を大幅に抑制しない限り、社員の数が増えていき、社員に支払う賃金総額も増加することになります。サラリーマンをしていると、自分がもらう給料の額ばかり考えてしまいますが、企業の経営者や人事担当者が見ているのは、各人の年収ではなく社員に支払う賃金の総額です。

企業が大幅に増収にならない限り、経営者は定年を延長した人の給料を大きく下げるとともに、中堅社員の給料を抑制することで何とか帳尻を合わせようとするでしょう。この話をすると、いわゆる世代間論争になってしまうのですが、若い世代の人も終身雇用のメリットを享受していますから、少ない原資を皆で分配するという解決策を避けて通ることはできません。

あまり気分のよい話ではありませんが、しっかりとした人生設計を立てるには、自分の年収が今後、どう推移するのか真剣に考える必要があります。では具体的にどのくらい給料が下がると思えばよいのでしょうか。


現時点で、日本のサラリーマンの平均年収から擬似的に算出した生涯年収(大学卒業後60歳まで勤務と仮定)は約1億8000万円です。先ほど説明したように、従業員を70歳まで雇用する場合、企業は社員の給与を大幅に引き下げる可能性が高いでしょう。

日本企業は年功序列なので中高年社員の給料が著しく高いという特長がありますから、もっとも削減効果が大きいのは中高年社員ということになります。定年延長となった高齢社員の年収を引き下げるとともに、一定以上のポストに就いていない人を管理職から外す、いわゆる役職定年を強化すると考えられます。

仮に、55歳から役職定年がスタートし、60歳以降は、現役世代の6割に年収が下がると仮定した場合、40歳以降は基本的に昇給しない給与体系にしないと企業は総人件費の増加を抑制できません。

この数字は、あくまで全体から見た平均値で、会社の状況によって様々だと思いますが、一般的には役員などに出世しない限り、40歳以降は昇給しない社会が到来しつつあるのは間違いないでしょう。

 
  • 1
  • 2