急にクラッとしたり、視界がグルグルまわったり、揺れている感覚があったり……。そんな「めまい」を経験したことがある方は少なくないかもしれません。わかりやすい痛みもなく、見た目の変化もないめまいの場合は、病院に行くべきかどうか迷うところですよね。

そこで今回は、身近なのに意外と知らないめまいについて、Twitterでも積極的に医療関連の情報を発信する耳鼻咽喉科専門医の前田陽平先生にじっくり教えていただきました。「めまいなのに耳鼻科の先生なの?」という疑問も、知れば納得の驚きのメカニズムからご紹介します。

 


「めまい」のメカニズムって?


グルグルまわる、フラフラする、立ちくらみ、これらはすべて「めまい」と表現されますが、めまいの中でも一番多いのが“耳”が原因で起こるめまいなんです。これは耳の奥の内耳(ないじ)というところにある、三半規管や耳石器(じせきき)と呼ばれる器官に異常が生じて、バランスのセンサーが誤作動することで起こります。

 

体のバランス感覚には三半規管が大事、という話は皆さんも聞いたことがあるかもしれませんね。三半規管はリンパ液という液体で満たされていて、リンパ液やその中にある“毛”のような細胞が動くことで体の動きを感知しています。

前庭というのは、体の傾きや揺れなどを感知する「前庭感覚」という働きを担っているところ。私たちは普段、この前提感覚と、重心などを感知する「深部感覚」、そして「視覚」といった3つの情報を脳で統合してうまくバランスをとって生活しています。

内耳にあるこうした動きのセンサーをもつ器官に異常が起きると、体は動いていないのに「動いている!」と勘違いした情報が脳に伝わって“グルグルまわる”ような錯覚が起きる、というのが、めまいの主な仕組みですね。

バランスをとるために情報を統合してくれる脳の、小脳や脳幹、あるいはそこにつながる神経に異常がある場合も内耳からの情報をうまくキャッチできなくなりますから、それがめまいの原因になることもあります。


「めまい」にはどんな種類があるの?


耳鼻科で診る場合は、主に「末梢性めまい」と「中枢性めまい」という分け方をしています。すごく簡単に説明すると、末梢性めまいは内耳などが原因で起こるめまい、中枢性めまいは脳の障害が原因で起こるめまいです。末梢性めまいは“グルグルまわる”ことが多く、中枢性めまいは “フラフラする”ことが多いんですが、その区別は非常に難しいというのが正直なところですね。

このふたつの区分とはちょっと違いますが、起き上がった時にクラッとする“立ちくらみ”を経験したことがある方はきっと多いですよね。人間は脳に血流を送ることで意識を保っています。血液は液体なので放っておくと当然下に落ちていこうとします。そこで心臓のポンプの働きとともに血管の収縮などを調整して脳に血流を送っているわけですが、急に起き上がるとそうした機能が一瞬おかしくなって貧血のような状態になり、クラッとするめまいが起こることもあります。

こんなふうに、グルグル、フラフラ、クラッ、それぞれ特徴は違えど、いずれも「めまい」なんですよね。めまいという日本語はとても意味が広くてしかも曖昧なので、患者さんの訴えと医師の理解のずれが生じやすい側面があります。

前田陽平 Yohei Maeda

大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科。耳鼻咽喉科専門医・指導医・医学博士。アレルギー学会認定専門医・指導医。Twitterでも耳鼻科や医療関連の情報を発信している。
【Twitter】ひまみみ 耳鼻科 前田陽平(@ent_univ_)


取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵

 

【全6回】
第二回「めまいの原因の6割は「耳」!医師が教える症状が出た時の注意点」
第三回「女性に「めまい」が多いのはなぜ?原因と治療法を耳鼻科医が解説」
第四回「「めまい」に潜む怖い病気と対処法。この症状には要注意!」
第五回「お医者さんへの説明が苦手な人必見! 耳鼻科医が教える「めまい相談術」」
第六回「医師が教えるめまいの予防・改善法。症状を繰り返す人に多い生活習慣とは」