ーー裕子にシンクロした感覚があったんですね。

はい。私自身心の奥底では本能的に求めているものがあったのかもしれません。2人の関係は曖昧だし決まりごとがないけれど、その瞬間を無邪気に生きているならそれでいいじゃんって思ったんです。

 

ーー裕子は離婚の痛手から先回りして、人に期待しない、求めないことで自分をガードしています。そのことをどう思いましたか?

めちゃめちゃわかりましたよー! 慎一君がなんとなく自分を気になっているんだろうなとわかっているのに、自分からは行けない。行ったら拒否されるかもしれないから、何の感情もない行きずりの人と遊んじゃうんですよね。

ーー寂しさを紛らわせるだけなら、自分にとってどうでもいい相手の方が気楽ですよね。

そうです。でも裕子はそこで、理屈や理性ではなく本能で、慎一君に向けて一歩を踏み出したんです。曖昧な状態でもいいや、今この瞬間の幸せを享受しようって。それは強くないとできないことなんです。曖昧でも大丈夫ということは、あなたがいなくなったとしても大丈夫ということなので、裕子はすごく強くなりましたよね。私は弱いので、曖昧な状態はきついです(笑)。すごく怖いです。裕子は強い女性だなと思います。

 

ーー「ホリデイラブ」(2018年)でブレイク後、パブリックイメージと自分自身とのズレに悩んだことはありましたか? 人は多かれ少なかれ、周囲からイメージを押し付けられて葛藤することはあると思うのですが、松本さんの葛藤は大きかったのではないかなと。

あの役をきっかけに「あざと可愛い」と言われるようになって、毎週のようにネットニュースにしていただいて、そのおかげで皆さんに名前を知ってもらえたので、本当に感謝しています。あのままいわゆるあざと可愛いことをやり続けていたら、全然違うところに行けたかもしれないけど、でも私は「なんか違う」と。そういう魂の声に従いました。本当の自分で歩んでいかないと、この世界では長く生きていけないと思ったんです。

虚像が作られていくのは怖いし、誤解されるストレスもあります。ものすごく葛藤しましたし、悩みました。ぶりっ子とか言われると弁解したくなるけれど、難しいんですよね。だから本来の自分で地道に歩み続けることにしました。そうしていれば、いつか気づいてくれると思うんですよね。周りからのイメージに迎合せずに強く生きていくことが、自分にとって幸せを感じる生き方だし、そのうち周りの声が気にならなくなるんじゃないかなって。なんなら「ちょっとあざと可愛くしちゃう?」くらい軽やかに、するりひゅるりと生きていくモードになりました。