現地時間5月25日に幕を閉じた、第77回カンヌ国際映画祭。今年最もメディアの注目を集めたひとりが、デミ・ムーア。マーガレット・クアリーとのW主演を果たした『The Substance(原題)』は、今回のカンヌで最長となる11分間のスタンディングオベーションが巻き起こり、フルヌードで挑んだデミの演技は高い評価を受けました。
『The Substance』はデミ演じる老いたハリウッド女優・エリザベスが年齢を理由に仕事を失い、医療行為によって若くて優秀な自分の分身・スー(マーガレット)を手に入れる、というボディ・ホラー作品。フルヌードのシーンは、医療行為によってエリザベスの背中がぱっかーん! と割れて、その中から若いスーが出てくる、という描写でのもの。聞くだけでも何だかしんどそうな内容ですが、このシーンのことをデミは、「とても脆くてデリケートな経験」と振り返っています。
こんなリアルな役を引き受けたデミはとても勇敢だなあと思うのですが、その甲斐あって、米メディアはデミを絶賛。そしてカンヌのレッドカーペットでも、試写会で着用したスキャパレリのドレスをはじめとするドレスアップ姿が、ひときわ輝いていました。
そのとき旬の女優さんって、必ずと言っていいほどレッドカーペットイベントでもいちばん素敵なドレスで現れるのですが、これは注目の存在ということでスタイリストがグレードアップしたり、ハイブランドがとっておきのドレスを貸してくれるとか、そういう背景があるのでしょうかね。それくらい、今回カンヌでのデミは連日完璧なドレスで現れ、美しかったです。
私の中ではデミといえば『ゴースト』の可憐なショートカット姿の印象が強いのですが、2003年の『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』では、約2600万円をかけて全身整形して挑んだデミ。『G.I.ジェーン』ではスキンヘッドになったし、これまでにも『スカーレット・レター』『素顔のままで』でフルヌードを披露。常に体当たりで仕事と向き合って来ました。
そんなデミが61歳の今、女優として見事なカムバックを果たしたことは、同じ女性として、勇気をもらえます。
ちなみにプライベートでは2022年に13歳年下のスイス人シェフとの交際をSNSでオープンにしていますが、現在も交際中なのかは不明。
そしてデミはエイジングについて、こう語っています。
「20代や30代のときに悩んでいたすべての自分の欠点は、今となっては神に感謝して愛おしいと思えるようになりました」。
そして56歳のときにはこんな言葉も。
「物事は移り変わって行く。私たちは怒りや傷、痛みや苦しみを抱えているときに老化するもの。いつもハッピーでいる必要はないけれど、執着しないことが大事」。
そんな風に自分の年齢を受け入れられたから、今、こんなにも彼女の表情はイキイキと輝いているのでしょうか。
前回記事「オスカー受賞の話題作『関心領域』をネタバレ解説。悪意と無関心はイコールなのか」>>
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