子どもを希望する女性は昇進意向も高い。求められる「環境設計の整備」

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また、今まさに議論が活発化している「少子化対策」について、実際の働いている女性たちの意識も気になるところ。本調査では「子供を持つための関心や行動」についてもアンケートで聞き取りを行っています。

3425人の働く女性のうち、「子あり・挙児希望あり(子どもを生むことを望んでいる)」は2027人。そのうち、「子どもを持つための具体的関心や行動がある人」は約半数の1009人に上りました。

出所:「働く女性 健康スコア トライアル版2023 実施レポート」より

「不妊治療」「卵子凍結」「里親制度」など、具体的関心や行動を示した「1009人」をさらに掘り下げて分析すると、「不妊治療の経験・予定あり」は30代から40代に集中。仕事の質的な心理負担が多く、役職にすでについている、もしくは昇進意向のある人が多い傾向が見られたそうです。

「卵子凍結に関心がある」のは20代後半から30代が中心。ワークエンゲージメント(仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組んでいる状態)が高く、加えて昇進意向も高い女性が多かったといいます。

いずれも、子どもを希望する働く女性の約半数が、子どもを産むタイミングを戦略的に考え、行動に移している現状が浮き彫りに。仕事への熱意が高い女性人材活用のためにも、企業側にはライフイベントをキャリアの中に組み込み、選択に悩む女性社員の不安や悩みに寄り添う姿勢と環境設計が求められると、本レポートは伝えます。

 

この「見える化」は、誰しもが働きやすい文化醸成につながる

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「子どもを持つ・持たないということは職場では話題にしづらいテーマ。働き続けながらいつ子どもを持つのか、どのような形で子どもを持つかを真剣に考え、悩んでいる女性がたくさんいるということが今回の調査でわかった」と、産婦人科医の吉田穂波さん。

「まるのうち保健室」プロジェクトを推進する三菱地所の井上友美さんは、「女性特有の健康課題は、人事部や会社からは踏み込みづらい現状がある。今回のような“見える化”は、企業間をまたいだ共通の指標になり、ネクストアクションのきっかけにもなるはず。女性だけでなく、誰しもが働きやすい文化醸成につなげていきたい」と語りました。

「まるのうち保健室」では今後も産学医連携ワーキングによって、働く女性の課題発見と企業の解決策を共創すべく、継続したスコアの調査・活用を行なっていく予定とのこと。自分の健康とどう向き合い、周囲の女性たちをどうサポートしていくのか。企業でなくても、私たち一人ひとりができることを考えるきっかけを与えてくれる調査結果といえそうです。
 

<「働く女性 健康スコア」調査概要>
■分析対象者:3425名
■参画企業:14社(アンファー、アイスタイル、クリーク・アンド・リバー社、東京海上日動、東京産業、日本事務器健康保険組合、丸ノ内ホテル、三菱地所、三菱地所プロパティマネジメント、三菱地所 リアルエステートサービス、ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ、他3社 ※50音順)
■実施期間:2022年9月13日(火)~2022年10月11日(火)

・丸の内エリアの開発を担う三菱地所が実施する「まるのうち保健室」において、現代女性の健康問題解決など女性医療コンサルティングを展開するファムメディコと共に、神奈川県立保健福祉大学の協力のもと、疫学調査をベースとした調査を開発。
・業種の異なる14社とともに、女性従業員を取り巻く健康や就業環境などについて可視化する産学医連携プロジェクト「働く女性 健康スコア」のトライアル版として、参画企業の人事部を介して約3400名が回答。
・各社毎の集計結果をフィードバックしたのち、ワーキングループにて課題の共有と解決策の探索を行った。その後、神奈川県立保健福祉大学がこれらの匿名化されたデータを受領し、統計的解析を実施。


文/金澤英恵

 

 
 
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