カップルがお互いに自分たちの身体について知り、思いやれる関係性を築くこと


男性更年期障害は、正式には「加齢性腺機能低下症」あるいは「LOH症候群」と言います。代表的な男性ホルモンであるテストステロンは、男性は精巣で、女性は卵巣で作られ、性欲を高める、筋肉や骨格を作る、活力を増すなどの働きをします。

分泌量は20代をピークに徐々に減り、重度のストレスがかかるとさらに低下します 。その影響で男性更年期障害が引き起こされます。

泌尿器科医 熊本悦明により作成。実線が男性、点線が女性に起こる更年期症状の年齢推移。

図に示したように、更年期症状が強く出るピーク年齢は、女性が50代前半、男性は50代後半と、男女でおよそ5年の差があります。夫婦の年齢差が5歳前後のカップルは、同じ時期に一緒に更年期障害に悩まされるというケースも起こり得るのです。

今までの色々な調査によると、夫婦間で「自分が更年期症状で苦しんでいるのにパートナーの理解がなく辛い思いをしている」という訴えがあります。

 

更年期について、女性は閉経前後の症状として本人も自覚しやすいことに加え、自分と同世代の女性であれば友人知人も共通の悩みとして抱えている人も多く、最近はマスコミでもよく取り上げられるようになったため、医師に相談するという選択肢も取りやすいはずです。

しかし、男性はいろいろな不定愁訴を更年期障害と紐づけて自覚するのは難しく、「仕事が忙しいので疲れているだけ」「何とか頑張らねば」と一人で苦しんで我慢する傾向もあります。

相手の変化をやさしく観察して、夫婦がお互いにサポートしあえる関係性を築けるのが理想ですね。更年期を上手に乗り越えることが、その後に続く30年、40年の夫婦仲にもつながってくると思います。

『性ホルモンで乗り越える 男と女の更年期』
関口由紀(著)/‎ 産業編集センター

年を重ねるごとに、ちょっとしたことでイライラする、不安感を覚える、物忘れが激しくなる。これらの更年期症状は「元気ホルモン=テストステロン」が少なくなっているから!  テストステロンというワードをもとに男女の更年期障害を分かりやすく解説。さらに、運動、食事、治療など多方面から不調を改善する方法を伝授します。

 

関口 由紀(Yuki Sekiguchi) 
女性医療クリニック・LUNAグループ」理事長。人生100歳時代の日本の中高年女性の生涯にわたるヘルスケアを実践する第一人者。女性医療のスペシャリストであり、女性泌尿器科分野の専門医として、特にミドルエイジ以降の女性のフェムゾーンの悩み、セックスの悩みに寄り添う。2022年5月には、女性の性や身体に関するオンラインプラットフォーム「Femzonelab フェムゾーンラボ」をスタート。著書に『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引』(径書房)『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)など。


取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣
イラスト/shutterstock

 

 

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