――恋は障害があるほど燃え上がる。例えば、『ローマの休日』で描かれる身分違いの恋や、『ウエスト・サイド・ストーリー』のように社会的に敵対する相手との恋……障害があればあるほどその恋は美しく燃え、見るものの心を揺さぶってきました。今回紹介する『ドラQ』もまさに周囲からは決して許されない、禁断の恋を描いた作品。ですが、この恋は一度足を踏み入れたら抜け出せない!? ちょっぴり刺激的なロマンスの世界へとあなたを誘います。

『ドラQ(1)』(ヤンマガKCスペシャル)


実は吸血鬼!女子高生・アメリの“許されない恋”


人間との接触、運動、涙目、笑顔、そして恋愛禁止! そんな5つの掟を守り、正体を隠しながら女子高生として人間界で暮らす吸血鬼・黒崎アメリ。だけど、そんな彼女は喧嘩ばかりしている人間のクラスメイト・パコに恋をしてしまうのです。

 

吸血鬼と人間という異種族間の恋。そして、人間が吸血鬼の血を飲むと感染してしまうことから、決して“許されない恋”であることは理解しているものの、どうしても好きな気持ちを抑えられないアメリ。

そんなある日、勇気を出してパコに接触をはかり、自分の正体を隠しながらも好意を伝えることに。

 


吸血鬼と人間、2人の仲を引き裂くのは……


自転車で2人乗りしながらの告白、高鳴る鼓動。互いに惹かれ合い、2人の想いが通じ合う……! 青春時代の王道とも言える恋愛のシチュエーションに読者である私たちも思わず胸が高なりますが、恋は障害があるほど燃え上がる――。

障害どころか、とんでもない刺客がいきなり2人の仲を引き裂くのです。

 

実はこのフードを被った不審な男の正体は“狼男”。吸血鬼と敵対する立場にある狼男は、近頃、吸血鬼の仕業に見せかけて人間を襲うなど悪事を働いていました。

首を刎ねられたものの、パコを助けるためにすぐさま立ち上がり狼男に立ち向かうアメリ。激闘の末、狼男を倒すことには成功したものの、パコに吸血鬼であることがバレてしまいます。このままアメリの恋は終わってしまうのかと思いきや……

 

あれ、なんだか良い雰囲気?

 


異種族恋愛だからこその愛情表現


そう、実はこのパコという男。アメリが吸血鬼だろうとなんだろうと関係ない! ただアメリという存在を真っ直ぐに見つめる、なんとも純粋で男気全開の漢なのです。そんなパコが魅せるラブシーンは、壁ドンでも顎クイでもバックハグでもなく……

 

生首キス、いやブラッディハグ? このラブシーンを一言で表す言葉は見つからないけれど、こんなにも血みどろなのに軽々しく踏み入れてはいけないような神々しさ、そして畏敬の念すら抱いでしまう人智を超えた美しさ! 思わず目を奪われてしまいます。

人間と吸血鬼。『ドラQ』で描かれる異種族恋愛だからこその愛情表現は、ちょっぴり刺激的だけれど甘美な魅力に溢れていて、今までみたことのないロマンスの世界へとあなたを誘います。

2人のブラッディ・ロマンスに浸る


こうしてあっさりと結ばれてしまった吸血鬼のアメリと人間のパコ。あれ、禁断の恋は? とお思いのみなさん。実はこの後も異種族であるがゆえの壁、そして互いの命を揺るがすような大きな出来事が2人を襲います。

けれど、障害があればあるほど美しく燃え、血が噴き出る……いや、血がたぎるような2人の恋愛模様。そんな新感覚のブラッディ・ロマンスにぜひ浸ってみてください。

 

<作品紹介>
『ドラQ』
千代 (著)

私、人間に「恋」をしています――。掟を守り正体を隠しながら、女子高生として人間界で暮らす吸血鬼・黒崎アメリ。そんな彼女が恋に落ちたのは、喧嘩ばかりしているクラスメイト・パコだった。正体を隠しながらも、パコに思いを伝えるアメリだったが、ある事件がきっかけで吸血鬼であることがバレてしまい‥‥!? 『ホームルーム』の鬼才・千代が描く、禁断の吸血ラブストーリー!


<作者プロフィール>
千代

漫画家。第72回「ちばてつや賞」ヤング部門にて『少女と銀杏』で優秀新人賞を受賞。2018年〜2020年にかけて「コミックDAYS」で連載していた『ホームルーム』(全8巻)は、多くの電子書店で総合ランキング1位を獲得し、山田裕貴で実写ドラマ化されるなど大きな話題に。現在は、「週刊ヤングマガジン」にて『ドラQ』(既刊1巻)を連載中。
Twitter:@wattsup1020