鈴虫蒔絵銚子 一口 江戸時代 17世紀 サントリー美術館 【全期間展示】

『源氏物語』や『伊勢物語』といった日本の物語や和歌、他にもさまざまな美術作品には、多くの虫たちが登場します。

 

長く親しまれ、そして近代・現代にも受け継がれる“虫と人との親密な関係”を改めて見つめ直し、日本のこころを映す展覧会「虫めづる日本の人々」が、東京・サントリー美術館で始まりました。

伊藤若冲「菜蟲譜(さいちゅうふ)」(部分)重要文化財 一巻 寛政2年(1790)頃 佐野市立吉澤記念美術館 【展示期間:8/9~9/18】(場面替えあり)

現代でも人気の画家・伊藤若冲の作品。巻物の長さは11メートルにも及びます。前半には野菜や果物、後半に昆虫や爬虫類など小さな生きものが登場します。昆虫はどこかユーモラスな姿態。カエルやトカゲも合わせると約60種もの生きものが描かれているとも。若冲の、小さきものへの慈しみの眼差しが感じられます。

喜多川歌麿「画本虫撰(えほんむしえらみ)」(部分) 二冊のうち下 天明8年(1788)千葉市美術館 【全期間展示】(ただし場面替えあり)

和歌に社会風刺や皮肉、滑稽を盛り込んだ「狂歌」と、江戸の浮世絵師・歌麿の絵による美しい『絵入狂歌本』。克明な写生が生み出した“虫草描写の傑作”とも言われています。一つの画面に植物と二種の虫が描かれ、狂歌二首が添えられています。上のページは「赤蜻蛉といなご」。花はキキョウやナデシコのようです。ほかに蜂やオケラ、ホタルなどが登場します。

美人画が有名な歌麿ですが、虫好きであったとも伝えられ、まるで「草花と昆虫の図鑑」のような一冊です。

鈴虫蒔絵銚子 一口 江戸時代 17世紀 サントリー美術館 【全期間展示】

全面に細い葉が茂り鈴虫が鳴いています。まさに「虫集(すだ)く」という情景でしょうか。黒漆塗りに蒔絵で描かれた精緻な文様。儚げな葉先の露。お酒を入れて用いたとすれば、なんとも趣たっぷりです。

土田麦僊「甜瓜(てんか)図」一幅 昭和6年(1931) 埼玉県立近代美術館 【展示期間:8/23~9/18】

巧みに構成された甜瓜(まくわうり)。明治生まれで昭和初期まで活躍した日本画家・土田麦僊(ばくせん)の作です。淡い緑色の色調が繊細さを醸し出していますが、次第に立ち枯れてゆく甜瓜に白い蝶が戯れていることに気がつくでしょうか。

古典の世界だけでなく明治時代以降も、こうして虫たちは大事なモチーフとして受け継がれています。

小さな虫の音に心惹かれる夏の宵。現代人の中にも生き続ける「虫めづる精神」を再確認する展覧会です。
 


展覧会「虫めづる日本の人々」


会期:2023年7月22日(土)〜9月18日(月・祝)
会場:サントリー美術館 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
お問い合わせ:03-3479-8600
開館時間|10時~18時(金・土および8月10日(木)、9月17日(日)は20時まで開館。いずれも入館は閉館の30分前まで)
休館日|火曜日(9月12日は18時まで開館)
サントリー美術館公式サイト suntory.jp/SMA/

 

チケット読者プレゼントのお知らせ
5組10名様に鑑賞券をプレゼント。

東京・サントリー美術館で開催されている展覧会「虫めづる日本の人々」(2023年7月22日~9月18日)の鑑賞券をプレゼントいたします。

応募締め切り:8月7日(月)〜11:59まで
●応募にはmi-mollet(ミモレ)の会員登録(無料)が必要です。
●プレゼントのご応募は、1回までとさせていただきます。
●当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。

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構成/からだとこころ編集チーム