2025年問題――日本においては2025年が、介護問題の爆発の年となると言われています。人口ボリュームの大きい団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるからです。75歳以上になると、急速に介護を必要とする人(要介護者)の割合が増えます。
今後、日本では「ビジネスケアラー」が急速に増加すると言われています。「ビジネスケアラー」とは、「働きながら介護をする人」「仕事と介護を両立している人」という意味です。経済産業省は2023年3月、2030年には家族介護者が833万人にのぼり、さらには、ビジネスケアラーが318万人になるとの予測を発表しています。
誰もがビジネスケアラーになる時代に知っておきたい、仕事と介護を両立させる方法について、
酒井穣さんの著書『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』より抜粋してお届けします。

方法1:介護職(介護のプロ)に人脈を作る


介護の負担を減らすには、介護サービスに関する知識が必要

日本の社会福祉は、知らないと損をするようになっています。それはそれで問題ですが、社会問題について文句を言っても、自分の状態は(すぐには)変わりません。

例えば、介護における寝具(布団、毛布、枕、マットレス)のクリーニングは、多くの自治体が無料〜1000円程度の低価格で提供しているサービスです。しかし、この事実を知らないため、要介護者が汚してしまった寝具などを、自分で洗っている人も少なくないのです。
こうしたサービスがあることを知っていれば、利用することができます。ですがそれについて知らなければ、そもそも利用することができないのです。

 

日本では、40歳以上の人であれば、介護保険料を支払っており、介護保険に加入しています。保険ですから、介護が必要になれば、それを利用することが可能です。

介護サービスの利用は、実際にかかっている費用の1割が自己負担となり、残りは保険がカバーしてくれる仕組みになっています(所得によっては2割以上というケースもあるので注意)。

しかし、日本の介護保険の場合、そもそも「どのような介護サービスが利用できるのか」を理解し、こちらから利用を申請しないと、介護サービスを使うことができません。
日本の介護保険制度は、世界一充実しているといっても過言ではありません。しかし残念なことですが、介護をしているのに、そんな最高の介護保険制度をまったく使っていないという人も多数いるのが現状です。
また、介護保険ではカバーしきれない、入院時に必要となるものの手配の代行など、民間のサービスも次々に登場してきています。人類史上かつてない高齢化をしている日本ですから、高齢者を支援するサービスが時間とともに充実していくことは明白です。

経産省によれば、こうした高齢者支援の民間市場は、2050年には77兆円規模の市場にまで成長するそうです。今後、どんどん生まれてくる優れた民間のサービスも、それを知らなければ、利用することができません。