いじめを「傍観」するのは、「加害」と同罪なのか?


Q. いじめの傍観者でいることを気に病んでいる。どんなアドバイスをしてやればよいのだろう?

A. 傍観者であることを責めないこと。子どもが直面している事情と気持ちに耳を傾けて。

 

いじめの4層構造という考え方が提唱されています。

①いじめられる子
②いじめる子
③はやし立てたり、面白がったりして見ている子
④見ていないふりをしている子

この④がいわゆる「傍観者」にあたります。わが子が傍観者でいる自分を気に病んでいたらどんな声かけをするのか、とても難しいところですよね。

傍観者である理由は一つではないと思います。単に無関心なのかもしれませんが、次は自分がいじめられるかもしれないという恐怖から何もできずにいるのかもしれません。

まずは、どのようないじめがあるのか、そして、自分はどんな気持ちになっているのか、本当はどうしたいのか、じっくり聴いてみることが大事だと思います。

気を付けたいのは、頭ごなしに「見てみぬふりをするなんて卑怯だ」とか「傍観者は加害者と同じだ」などとプレッシャーを与えないこと。まずは、傍観者でいることを苦しく思ったその気持ちを受け止め、話してくれたことを肯定しましょう

その上で、何かできることがないか、一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

先生にお願いして、誰が報告したかを絶対に秘密にして調査をしてもらうように相談してみる。先生に匿名で手紙を書く。同じように状況を悲観しているお友達と力を合わせてみる。あるいは、いじめられている子に、こそっと「自分は味方だ」と伝えることだけでもしてみる。──そういったことが考えられるかもしれません。

被害者の子からすると、傍観者の存在が絶望感につながったり、心の痛みがよりいっそう大きくなったりすることがあると思います。逆に、ちょっとした言葉がいじめを受けている子の心を救うこともあるでしょう。とても難しい問題ではありますが、お子さんの気持ちに寄り添いながら、何ができるかを一緒に考えることがとても大切だと思います。

 

著者プロフィール
弁護士 高橋 麻理(べんごし たかはし まり)さん

第二東京弁護士会所属。弁護士法人Authense法律事務所。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年検察官任官。東京地検、大阪地検などで勤務後、2011年弁護士登録。社外役員(社外取締役・社外監査役)に就任し、社内不祥事予防等業務に従事する一方、子どもが関わる離婚問題、子どもに関わる犯罪、学校問題等にも取り組み、子どもへの法教育として小中学校でのいじめ予防授業、保護者向け講演なども行う。法律問題を身近なものとしてわかりやすく伝えることを目指し、テレビ、ラジオ、新聞等メディア出演も多数。『大人になる前に知ってほしい 生きるために必要な「法律」のはなし』(ナツメ社)共同監修。一人の母として子育て奮闘中。
X(旧Twitter):@mari27675447

 

 

『子育て六法』
著者:弁護士 高橋麻理 日東書院本社 1650円(税込)

いじめ・体罰・虐待・SNS・不適切保育etc……。自身も子育てに奮闘中の著者が、妊娠中から乳幼児期、思春期までの子育てトラブルへの備え&解決に役立つ「法律」を、一問一答式で分かりやすく解説します。「保育施設が子ども同士の暴力や仲間外れを放置している」「ふざけてお友達の服を脱がせた」など、「トラブル」なのかどうか判断しづらく、訴え方や対処法に困ってしまうような事例を取り上げているのも魅力です。


写真:Shutterstock
構成/さくま健太