コーヒーをなくさない努力

 

とはいえ、私は正直さほど悲観的にはなっていません。コーヒーの種にはカネフォラ種、リベリカ種、また交配品種も存在し、ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)に代表される国際機関が、気候変動に耐えうる良質な品種の開発を積極的に行っています。

 

歴史を振り返れば、「人類はなんとかしてコーヒーを飲むはずだ」という確信もあります。歴史上、政策や国際情勢によりコーヒー不足に陥った国では、それを不満に思う人たちが必ずコーヒーを取り戻してきました。フランス史上もっとも有名な英雄ナポレオンの失脚に少なからず影響を与えたのも「大陸封鎖令」の影響で国民にコーヒーを飲めない不満があったからだと言われているくらいです。

ちなみに「大陸封鎖令」でヨーロッパをコーヒー不足にしたナポレオンですが、本人はコーヒーが大好きだったと言われています。失脚してセントヘレナ島に幽閉され、体調が悪化してコーヒーを止められてからも、どうしてもコーヒーが飲みたいと言って周囲に懇願していたといいます。

また、コーヒー不足に陥ったヨーロッパでは、さかんに代用コーヒーが作られました。

しかし、カフェインを含む飲料を簡単に作ることはできません。そんなわけでナポレオン失脚後、ヨーロッパにコーヒーが戻ってきて大ブームになりました。

時代は進んで、2050年問題では世界的なコーヒー不足が懸念されるわけですが、現代ではさまざまな技術が研究・開発されています。品種改良の研究も進んでいますし、新たな種を見つけるための努力も行われています。知り合いの科学者には、「コーヒーをなくしたくないという意志さえあれば、なんとかなるだろう」と言う人もいます。

だからと言って、2050年問題を軽く考えるということではなく、起こるべき未来としてとらえ、コーヒーをなくさない努力を根気強く続ける必要があるのだと思います。