綺麗な字を書きたい。綺麗な字を書く人を見ると敬意を覚える。そんな人は多いのではないでしょうか? 昨今Instagramには、綺麗な書き文字をアップする美文字インスタグラマーも増えています。その中でも多くファンから愛されるshunpuさん。初の著書『誰でも美文字』を刊行し、好評を博しています。

人々はなぜshunpuさんの文字にこんなにも惹かれるのか。そこには、現代人が抱える心の散らかりが関係しているのかもしれません。Shunpuさんとともに、美文字を通して私たちが見ているものについて考えてみませんか?

日本らしい季語はもちろん、ふと目にした看板、読んだ書籍などから幅広く、とにかく毎日書いているそう。写真はアン ミカさんのポジティブ名言。(出典は『Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室』より)。
「まるでアン ミカさん自身からポジティブカウンセリングを受けているみたい!」と大好評。『Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室』(講談社)


字を綺麗に書くことは整理整頓と似ている


shunpuさんがインスタ上にアップするのは“美文字”。書道で書かれる美しい筆文字とは、どういったニュアンスの違いがあるのでしょう?

書道の字は芸術的な側面が強いと思うんですね。でも僕が書くのは普段使いの文字。手紙で書いたり、上司への伝言メモで書くなど、どちらかというとコミュニケーションとしての字だと思っています。それだけに、さらっと書いたときの文字が綺麗な人を見ると、『きちんと暮らしている人なのかな』などと、その人に対するイメージが上がったりします。第一印象が決まるファッションと同じで、美文字は“日常の中の一つの装い”みたいなものだと僕は感じています」

 

美しい書き文字をインスタ上にアップしている人は多くいますが、なぜ特にshunpuさんの文字は、書籍化されるほど大きな支持を得たのでしょう。他の美文字インスタグラマーたちの文字と見比べてみると、受けたのは「圧倒的に癖がない」という印象。そこには、shunpuさんが美文字を書くようになった経緯が影響しているようです。

「もともと幼少期から書道は習っていたのですが、書き文字にこだわるようになったのは小学校に入ってから。授業でノートをとって、それを後で見返したときに“綺麗じゃないと嫌”だったんです。それで気を付けて字を書くようになり、だんだんと美文字そのものを追求するようになっていきました。だからどちらかというと僕にとって綺麗な文字を書くことは、片付けとか整理整頓と似ているかも。等間隔とか比率とか考えて書くことが多いのですが、それはスペースが決まった引き出しの中に、きちっと物を収納する感覚に近い気がします」

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1ミリのズレにもこだわる


そう言われてみると、たしかに「なるほど」と納得させられるものが。なぜならshunpuさんの文字は美しいだけでなく圧倒的にスッキリと整っていて、見ていると心が整頓されていくような感覚を覚えるからです。

「たしかにインスタを見てくださった方からは、『見ていると心がスッキリします』とか『爽快感があります』といったコメントをいただきます。なぜそう思ってもらえるのかは分かりませんが、強いて理由があるとするなら、僕の書く文字は1ミリのズレにもこだわっているからかも。

毛筆というのはどちらかというと芸術なので、言い方は悪いですが、ある程度ごまかしがきくところはあると思います。でも硬筆って“綺麗”の枠が決まっていますし、誰もが見慣れているものだけに、1ミリズレても違和感を抱かれやすい。僕は書道を習ってはいましたが、僕の書く文字はとくに流派などはありません。好きなインスタの文字などを見て研究し、それを吸収しながらひたすら理想の“美文字”を練習してきただけ。完全な独学ですけど、その精緻さみたいなものがウケているのかもしれません」

もう一つ、私たちがshunpuさんの字を見ると心が整うような気がするのは、shunpuさん自身の書いているときの心持ちが影響しているのかもしれません。

「文字は基本的に毎日書きますが、僕は昼間はアパレル業界で働いているので、書くのは仕事が終わった夜。一番のリラックスタイムに、何かしら10分ぐらい書くんです。それで心を落ち着かせているというか、リセットになっているところはあると思います。ただ、その時間帯にはテレビを見ていることも多く、よく出演している方の名前を書くことも多くなります。僕のインスタに“大谷翔平”や“藤井聡太”の登場率が高いのはそのためです(笑)」