案の定、NGリストの存在が明らかとなり、会見が茶番だったことが明らかとなってしまいました。こうなってしまうと、いくら井ノ原さんが誠実に対応しても、すべてが吹き飛んでしまいます。人間ですから色々な感情が出てくることは、ある程度はやむを得ませんが、謝罪する側の組織の代表として会見に臨んでいるという立場を忘れてはなりません。

イラスト:Shutterstock

さらに良くないことに、NGリストの存在が報道で明らかになると、当初、ジャニーズは一部を認める声明を出したものの、世間の批判が大きいと見るや、今度はコンサル会社の責任であると説明を変えてしまいました。これも決してやってはいけないことの典型例と言えます。

業務を外注することは、どの業界でもよくあることですが、すべての責任は発注側にあるというのは、ビジネスの世界では絶対的な常識です。同社の声明は多くのビジネス関係者の神経を逆なでしたことでしょう。

 

この話も、私たちの日常に照らせば、決して難しいことではありません。

仕事をする上で、自身が所属している部署以外のミスによって、顧客に迷惑をかけてしまうケースはよくあります。自身は営業部に所属していて、管理部のミスで顧客に間違った商品を送ったケースなどがこれに該当します。

自身の気持ちとしては、ミスしたのは自分ではなく、あくまで管理部ですが、顧客にとっては営業部なのか管理部なのかは関係ありません。責任があるのは会社全体であり、その会社を代表して顧客に接している以上、自身に何のミスがなくても、相手に謝罪する責任があります。

この話もごく当たり前のことではありますが、現実にはこれができないビジネスパーソンがたくさんいます。「私は悪くないのに」という気持ちが先に立ち、「他の部署のミスなので自分は悪くない」といった態度で相手に接し、かえって相手を怒らせるといったパターンです。

さらに言えば、今回のケースのように、説明の内容が二転三転することも、よくある話ですが、これも確実に相手を怒らせることになるでしょう。

一度、外に出してしまった発言や情報は撤回できませんから、相手が納得するまで基本的には謝り続けるしか問題を解決する方法はありません。一方で、相手も人間ですから、誠意を持って繰り返し謝罪すれば、大抵の場合、何らかの着地点を見つけられるものです。

しかし、多くのビジネスパーソンがそれができず、自己弁護ばかりすることで事態を悪化させています。

筆者の過去のビジネス経験からほぼ断言できますが、謝罪が上手な人は確実に成功(出世)する一方、まともに謝罪ができない人で、ビジネスで成功した人は見たことがありません。ジャニーズの会見は図らずも、身の回りで観察される失敗の典型例となっており、他山の石とすべきものだと思います。

 

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