作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた山本理沙。その赤裸々な声は、まさに「現実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の家族の在り方を浮き彫りにします。

今回お話を伺ったのは、現在夫と別居して3年経過したという紗奈さん(仮名)38歳。妻は離婚の意思を固めている一方、夫は頑なに離婚を拒みながら完全に音信不通。妻を遠ざけ拒絶し続けていると言います。数年連絡すら取れず、それでも法律上は「夫婦」である男女。2人の間に、一体何が起きたのでしょうか?

 
取材者プロフィール
紗奈さん(仮名)38歳
職業:音楽関連会社勤務 
家族構成:別居中の夫
 


3年別居、連絡もとれない夫


「夫とはもう長いこと会っていません。2年ほどは、連絡も取れない状態なんです」

変ですよね、と紗奈さんは微笑みながら付け加えましたが、その穏やかな表情からは良くも悪くも夫への関心は薄いように見えます。

夫と別居して3年以上、当初は離婚調停もされていたと言いますが、夫は頑なに離婚を拒否。受け入れ難い条件を提示しつづけ、調停は長期間に渡った末に、不成立となってしまいました。その後、夫婦は不仲を通り越し、なんと音信不通状態から前にも後にも進めなくなってしまったそうです。

夫婦の間に子どもはいないとのこと、そのような状態を何年も続けるよりは、何とかして離婚してしまった方がお互いのためになるのでは……と反射的に思ってしまいましたが、離婚を強く希望していた紗奈さんご自身にも、少しばかり心境の変化が生じたようです。

「LINEなどのSNSもすべて夫にブロックされてしまって。なので話し合いもできない状態です。もう3年近く会ってもいないので、彼が何を考えているのかわかりませんし、近況も知りません。たぶん、それが彼なりの復讐なんでしょうが。もちろん離婚できたらいいとは思いますけど……。

でも私も正直、夫と連絡が取れなくなってから、何だか色々なことがどうでも良くなってしまったんです。夫がどうこうというよりも、結婚自体、独身とか既婚とか、そういう概念ぜんぶ『もう別に何でもいっか』と感じています」

長期間連絡も取れず、どこで何をしているかわからない男性が自分の夫だというのは、いまいち不思議で想像もつかない状態です。

夫婦がこのような関係となった経緯を伺っていきます。