女性の美を支えてきた化粧品ブランド・ポーラが、2021年4月に「ポーラ幸せ研究所」を設立しました。幸せのメカニズムを科学的に分析し、ポーラで実践を重ねながら、得た知見を社会に提供すること。それが目的だと言います。昨今、「ウェルビーイング」(心身の健康や幸福)が注目されるものの、実際に組織やチームにどう落とし込んでいけばいいのか、自分がどう取り組むべきなのか、分からないという方も多いはず。

今回はその実践方法を詳しく紹介する、ポーラ 代表取締役社長の及川美紀さんと一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事の前野マドカさんの共著『幸せなチームが結果を出す  ウェルビーイング・マネジメント7か条』から、従業員の幸福度の向上=「幸せシフト」を行った同社の驚くべき意識変化について、特別に一部抜粋してご紹介します!

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会社が目指すのは利益だけ? という疑問


かつてポーラで働く社員たちは、いろいろな意味で内向きでした。訪問販売で長年の固定ファンのお客さまがいらっしゃる環境に慣れ、堅実だけれど、大きなチャレンジをしたり、外に向かって世界を広げようとしたりする意欲に乏しかったと思います。

 


そういう時期が続いたせいでしょう。市場調査でポーラに対して「無関心」な人が6割を超えるという結果が出て、ショックを受けたこともありました。マーケットでの存在感が薄かったのです。

ところが、2010年代半ばから海外旅行客によるインバウンド需要が高まったこと、2017年に発売したシワ改善化粧品「リンクルショット メディカル セラム」が大ヒットしたことにより、ポーラの業績は大きく上向きました。企業のブランド価値も一気に上がりました。

しかし、多くの社員たちはまだどこか自信を持てない状態にありました。インバウンド需要は外的要因であり、ヒット製品は研究開発チームの長年の努力の成果。最高益を誇りに思う一方で、自分がどれだけ貢献できたか、どんな役割を果たしたかが確信できない複雑な思い。

好業績は一時的なもので続かない、反動が怖いといった不安……。まじめで謙虚、慎重な社員が多いポーラの社風もあって、そんな残念な思考パターンが続いていたのです。