女性ばかりに家事育児の負担が集中し、キャリアの中断を強いられる

日本においても、男性の家事・育児参加時間の異常なほどの少なさは深刻な課題です。令和3年社会生活基本調査(総務省統計局)の「6歳未満の子供を持つ夫・妻の家事関連時間の推移」の項目を見ると、2021年の調査では「家事関連」の時間は男性が1時間54分、女性は7時間28分と、女性が男性の3.9倍以上、「育児」においても男性が1時間5分、女性が3時間54分と、女性が男性の3.6倍という結果に。年々少しずつ変化は見られるとは言え、男女で大きな差が付く状況は長らくの間固定化しています。

たとえ本来楽しい仕事だとしても、過労死ラインすれすれの労働時間を強いられれば人は壊れてしまいます。その仕事を楽しいとも思えなくなるのは当然です。命を預かるという極めて責任が重い行為の負担が、母親に過剰にのしかかっている。この事実は、やはり母親になった後悔とは切っても切り離せません。また、単純に割く時間や負担が大きいだけでなく、社会での立場や、生きがい、存在そのものにも影響がでます。

「女性は、いったん子どもを産むと、多くのことを捨ててしまいます。男性はそうしないのに。」(p152)

 

出産によりライフスタイルの変化を余儀なくされるのは女性であることが多いです。「マミートラック」と言われ、女性が復帰後に部署を異動させられたり、昇進コースから外されてしまうことは大きな社会問題です。また、「出産前に比べて女性は長期にわたって20%も年収が下がり続けている状況が確認されている。」(PRESIDENT Online 子供を産むと年収2割減が続くペナルティー…産後3カ月で復帰したエコノミストが訴える"重大な少子化の原因")と言われているように、女性は出産により、キャリアの中断と、それに伴う莫大な経済損失を余儀なくされる可能性がとても高いのが実情です。

 

「みんなが子どもや子育てを愛せるわけじゃない」という当たり前の事実

こういった、女性が母親になることで起きる社会的影響のほかにも、23人の「母親になって後悔してる」女性たちの声からは、母親であることが「苦痛」になり得る要因が見えてきます。それは、単純に親になること、子育てが「好きではない」「向いていない」人もいるという事実です。

 

本の中でも、「優しく語りかけるのも、何時間もガラガラであやすのも好きじゃない。苦手だった。何時間も座りっぱなしで同じ本を読んだり同じ曲を聞いたりするのも好きじゃない。」(p186)という母親の声が出てきます。正直、これを読んだとき、「そりゃそうだよな」と思いました。筆者も姪っ子がいるので子どもと遊んだりすることがありますが、読み聞かせをしたり、積み木やブロック遊びをしたり、子どもが喜ぶ・夢中になるものって大人にとってはすごく退屈(人によるでしょうが)。それに四六時中付き合うなんて、考えただけでどうにかなりそうです。