只今ユーロスペースで行われているレイトショーは「此の岸のこと」「わさび」「春なれや」の3つのストーリーからなる外山文治監督の短編映画集

演出・監督・脚本の他にも宣伝から全て自らこなし、優しさと映画へのほとばしる情熱を感じさせてくれる37歳。

ほぼ毎日映画館に足を運んでいるという外山監督と。以降も登壇されて出演者とのトークショーも!

その若さから考えられないほど達観した視点から映し出された3部作は、日本の美しい景色の中にゆっくり紡ぎ出される時間と、変わりゆく時代の厳しさのようなものが入り混じり、見終えた後も切なさが何度も、何度もリフレインしてしまうような作品でした。

此の岸のこと」は老夫婦を描いた作品。認知症を患った妻の介護に日々終われ、先の見えない人生に途方に暮れる夫。高齢化社会・核家族・介護といった現代の問題を浮き彫りにしながらも、老夫婦が寄り添って生きる様は、儚くも美しいラブストーリーにも感じます。終始セリフのない映画でしたが、言葉がないからこそ感じる深みのある人間愛がそこにありました。

美しい湖畔の情景に潜む哀しく切ないストーリー。そこに愛があるからこそ・・・

わさび」は飛騨高山を舞台に、離別して寿司屋を営む父親と二人暮らしする女子高生。ティーンエイジャーという多感な時期に、父親がうつ病になり、自分の思いや夢を押し殺してでも父親を助けようとひたむきに生きる主人公の姿が、情緒ある冬の飛騨高山を背景に切なく映ります。NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」でヒロインを演じていた芳根京子さんの透き通った存在感と演技力も素敵でした。

美しい飛騨高山の街並みを背景にストーリーは流れていきます。

そして今回の一番の目的でもある「春なれや」。この映画は、私の生まれ故郷の熊本県菊池市が舞台。桜満開の春、一人の老齢の女性と若い青年が出会い、「60年前に植えたソメイヨシノの桜がどうなっているかを見てみたい」という彼女の言葉に、未来に希望を見いだせない青年が思い立ったようにその桜の木を探しに行くストーリー。世代も考え方も違う二人が、一本の桜に希望を託し山道を歩く姿が印象的です。

ベテランの吉行和子さんと今注目を集めている村上虹郎さんお二人の演技や空気感も素敵でした。
 
映し出されるシーンは、通っていいた高校のそばにある参道など思い出深い景色ばかり。

この撮影終了の直後に熊本地震が発生。この作品は災害前の元気だった菊池市を残してくれた貴重な映像でもあります。外山監督の呼びかけで、現地での上映会が実行されたそうですが、きっとこの映画のように、誰もが「希望」を持って未来へ進む勇気を与えてくれたことでしょう。満開の桜と美しい故郷の映像に、私も思わず目が潤んでしまいました。

この三作には、どれも川のせせらぎと水辺の音が私の耳に深く残っています。時代が変われど、水は淡々と日々流れ、変わることのない故郷の情景に思いを馳せます。時経ても、脈々と受け継がれる日本人のスピリッツを外山監督は「映画」というツールを通して伝えてくれたような気がします。

ぜひ多くの方に観ていただきたい映画です。