先週末、大好きなデザイナーの一人、ドリス・ヴァン・ノッテンのドキュメンタリー映画を観てきました。

コーディネイトを紹介するコーナーで、いきなりすいません。でも、あまりに感動してしまい! 上映館数は限られていますが、彼のデザインする服に興味がないとしても、おしゃれに迷われている方やファッションとは何かを考えるのが好きな方には是非観ていただきたいな、と。

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『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
監督が3年かけて出演を口説きおとした孤高のデザイナー、ドリスを1年間追ったドキュメンタリー。美意識はもちろん、誠実さがビシビシと。音楽はレディオヘッドのベーシスト、コリン・グリーンウッド。


ドリスに対する熱い気持ちをお伝えしようとしつつも、今回、まったくもって彼の服を着用しておらず恐縮です(苦笑)。

今回は、「ブランドの服をまとうということ」のお話。

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黒を基調にしたコーディネイト。ファーのスヌードはストレッチがきいているので、コートの上からでもザックリとまとっても、コンパクトにまとまります。ウールのコートの上だけでなく、シャツ、ニット、ワンピース、トレンチコートなど、夏以外の季節の温度調節に重宝しています。
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パワーショルダーぎみのトップスが今日のキーアイテムです。このようにシンプルなのに、少しだけエッジの効いているアイテムはトップスとボトムだけで完結しているワンツーコーデが無難にならずに便利。それにしても放っておくとモノトーンの服ばかりをコーディネイトしてしまう(涙)。


トレンドやポピュラリティに屈しない「タイムレスな服」づくりを追及しているドリス。映画ではストイックな制作現場はもちろんのこと、これらを観るだけでも充分に映画代金を払うに値する麗しすぎる邸宅、季節ごとに表情を変える自宅の花園や家庭菜園が映し出されます。それを自ら摘んで食卓の花器に飾り、収穫した野菜で手際よく調理をしていくドリス(そのカットされた色とりどりの野菜までもが本当に美しい)。この生活すべてが彼のインスピレーションの源だということがよく分かります。彼のデザインする服はファンタジック、ドリーミィなどとと評されることもありますが、なんのなんの。映し出されるそのていねいな暮らしぶりは、彼ほど地に足がついた“生活者”はいないのでは、と思えてしまうほど。彼にとって、生活もデザインもすべてが同一線上にあるアート活動の一環なのだなぁ(それは家事までも!)、と深く感銘を受けました。

彼は言います、「じっくりと味わえる服がつくりたい。それは持ち主と一緒に成長できる服だ」と。自身の自由なクリエーションを守るため、スポンサーをつけずに活動を続ける彼(現在のファッションビジネスの奇跡!)ですが、その一方、インドの刺繍工房の方々の職場環境や雇用のこともしっかり考えています。ゆえに、毎シーズンごと刺繍アイテムを発表することも忘れないなんて。あぁ、なんと素晴らしい!

服を買う、着るということは、デザイナーのアティチュードに共感し、その思いごとまとい、共有することなのだな、と思った次第です。服を買う、そして着るという行為は、決して「自分ごと」ではなく、確実に社会とつながっている行為である(これは物を買う行為全般に言えますね)――そんなことを思い、これからのおしゃれ、そして生活全般を見直す良いキッカケとなりました。

まったくもってコーディネイトとは関係ないことをつらつらと書き連ねてしまいましたが、ファッションとの向き合い方のひとつの考え方ということでどうぞお許しを。

 


CREDIT:
スヌード/Yves SALOMON この日と同じ
コート/パオラ フラーニ この日と同じ
トップス/アレキサンダー・ワン
パンツ/ユニクロU この日と同じ
バッグ/A.W.アンダーソン×ユニクロ この日と同じ
靴/リーボック この日と同じ

アイコン画像

大森葉子

主にビューティ担当。「今日は夏休み?」と聞かれてしまうほどの“ど”カジュアルと「今日は何かあるの?」と聞かれてしまうほどのデザイン性のある服が好き。ほぼ“一目惚れ”買い派。

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