次世代を担う若手職人たちの米沢愛①【from米沢サテライト】

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時代や流行に流されない、まっすぐな酒造りを

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酒どころとして全国的に有名な銘柄も多い米沢。市内に4つある酒蔵の中のひとつ、香坂酒造さんを訪問。特別に酒蔵の中を見学させていただきながら、4代目の香坂洋平さんに米沢での酒造りについてお話をうかがいました。長く続いてきた味を守っていくことは、現代では相当な覚悟がいるようです。

「米沢の酒造りの特徴は、やはりこの雪ですね。酒造りは何より温度管理が大事なのですが、蔵が雪にいったん覆われると、外が晴れてようと吹雪いてようと、蔵の中は常に2〜3℃に保たれるので、±0.5〜1℃といった微妙な温度調整がしやすいんです。雪が降ると空気も澄んできれいになるし、一帯が山に囲まれているから水もいい。どんなに技術が進歩しても、この環境だけは真似できませんね」

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香坂酒造さんで造っている銘柄の一部。中央、黒いラベルの『香梅 峻』の「峻」にはチャレンジ、挑戦という意味があるとか。変わらない酒造りをしながらも、時代の変化にもしっかり対応されています。

そんな絶好の環境で造られる『香梅』は、旨みはありながらもキレのいい辛口。主張はありつつも料理の味を邪魔しない、バランスのよさが持ち味です。米沢の地酒の中では“男酒”と呼ばれるような、比較的飲み応えのあるタイプですが、都心で行う試飲会などでは逆に「すっきりしてる」といわれるのだとか。

「特に東京では濃い味の酒が好まれるんですが、日本酒メインの料理屋さんなどはいろんな銘柄を少しずつ、というスタイルなので、最初のひと口にインパクトがあるほうが人気も出やすい、というのもあります。そういう意味では、うちの酒は中途半端。ただ、しっかりと酒の旨みを主張しながらも料理の味を引き立てるバランス型なので、毎日家で飲むには向いてるんですよ。「できないのとやらないのは違うよ」と人にいわれて、一応今っぽい味も造ったりはしていますけど、それはあくまで“こういうのもあります”くらいの存在。わざわざ流行に合わせずとも、そういう良さをわかっていただける方に選んでもらえればいいと思っています。深く狭く、といいますか」

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敷地内には雪を貯めておく場所も。3月下旬でも、まだこれだけ残っていました。
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見上げると、米を蒸した際に蒸気を逃がすための天窓が。太い立派な曲がり梁にも趣があります

製造技術の発達やマーケティングの多様化、さらに日本酒ブームの到来で、日本の酒造りはここ数年でずいぶん変わったとか。そんな中でも自分が思う理想の味を守り続ける香坂さんの酒造りに、信頼をおいている昔からのファンの方は多いはず。

「ホームページなんかも、あえて昔に作ったやつのまんまです。きれいに作り直せばそれだけで買ってくれる人もいるでしょうけど、そういうお客さんは離れるのも早い。それよりも、うちの酒と深く繋がっている人から“あそこのはいいよ”なんて風にゆっくり広がってくれればと思っています。興味があれば何でも探して買える時代ですし、今は情報がまわりすぎているんでね」

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硬派で誠実な、米沢人のもの作りへの気概を感じさせてくれるお話でした。
『香梅』は、米沢の飲食店では「べこや」、お土産なら駅前の「金内酒店」や上杉城史苑などで取り扱いが。また東京でも、飲食店なら新宿、渋谷、池袋の「御八」、五反田「げってん」で飲むことができます。また東武百貨店池袋店、秋葉原「ジザケジャパン」で購入も可能です。米沢の自然と香坂さんの情熱が作る美味しさを、ぜひ味わってみてください。


「香坂酒造」
住所:米沢市中央7-3-10
tel. 0238-23-5555

撮影/編集部(ギータ青年) 取材・文/山崎恵
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