『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
監督:リューベン・オストルンド
出演:クレス・バング、エリザベス・モス
配給:トランスフォーマー 4月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開にて公開
©2017 Plattform Prodtion AB/Societe Parisienne de Production/Essential Filmproduktion GmbH/Coproduction Office ApS
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『ザ・スクエア 思いやりの聖域』。前作『フレンチアルプスで起きたこと』で日本でも名前を知られることになったスウェーデンの監督、リューベン・オストルンドの最新作が公開されます。人間の行動をじーっと観察するようなちょっと意地悪な視線と、シニカルなユーモアで笑わせたあとで観る者を居心地悪くさせるタッチが監督の持ち味。この新作も、気まずい傑作ともいえる人間ドラマです。
現代美術館のキュレーター、クリスティアンは、次の展覧会の目玉である「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」“ザ・スクエア”という作品を準備中。地面に描かれた正方形のスペースのなかでは、どんな人に対しても救いの手を差し出さなければならない、という参加型アートです。そんな人間の善意を伝える展示を準備しているなか、クリスティアンは路上で人助けをしたことで携帯電話と財布を盗まれるという皮肉な事態に直面してしまいます。部下のアイデアにのって、犯人を暴き出すために脅迫まがいのビラをまいたことで、濡れ衣を着せられた少年に付きまとわれることに。一方仕事ではPR会社が「ザ・スクエア」をプロモーションするための過激な動画を配信してしまい、見事に“炎上”。私生活でも仕事でもとんでもないことに巻き込まれたクリスティアンは、その場しのぎの行動を繰り返していきますが……。
他者に対して関心を持ち、偏見なく誰に対しても公平であること。多様性を尊重することや、格差をなくすことの大切さ。頭のなかではわかっていても、もしも自分が追いつめられてしまったとき、本当にあなたはフェアでいられるの!? そんなのはきれいごとだ! とキレる寸前になるような様々な状況を用意して(トークショーで下品な言葉を放ち続ける観客を排除しないシーンのいたたまれなさと言ったら……)、ラストの瞬間まで観る者に問いをつきつけてきます。何に笑って何に気まずくなったのかで、自分の欺瞞が暴かれるようなシミュレーション映画を、ぜひ体験してみてください。
PROFILE
細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
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