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『29歳問題』
監督:キーレン・パン
出演:クリッシー・チャウ、ジョイス・チェン
配給:ザジフィルムズ、ポリゴンマジック 5月19日よりYEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開
©2017 China 3D Digital Entertainment Limited


今回は、タイトルを聞いて、私たちにとってはすでに通ってきた過去の話……? と回れ右するにはもったいない香港映画『29歳問題』を紹介したいと思います。2005年の香港を舞台に描かれるのは、30歳を目前に控えたクリスティの物語。そう、この映画のヒロインは70年代生まれのミモレ世代なのです。

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化粧品メーカーに勤めるクリスティは、やりがいのあるポジションを任されてはいるけれど、昇進によって責任を負うことが増え、多忙な恋人ともすれ違い気味。そんななか、大家の都合でアパートを追い出された彼女は、パリに旅行中だという女の子、ティンロの部屋に仮住まいすることになります。ティンロの日記をこっそり読むと、何と偶然にも自分と誕生日が一緒。日記を読み進めるうち、自分とはまったく違う人生の楽しみ方を知っているティンロの生き方に惹かれていくのです。

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かつては女の結婚適齢期がクリスマスケーキにたとえられたり、ドラマ『29歳のクリスマス』なんてドラマもありました(主題歌はマライア・キャリー!)。でもこの映画における“29歳”という年齢は、あくまでも象徴的に使われている数字なのだと思います。大切なのは心を動かされるものや出会いをおざなりにせず、結婚や仕事も含めた人生のタイミングを誰かとくらべることなく自分らしく選びとっていくこと。クリスティとティンロがどの世代の人の心にも響くメッセージを伝えてくれるからこそ、香港で大ヒットを記録したのではないでしょうか。監督、脚本を手がけたのは、キーレン・パン。自身がヒロイン二役を演じて05年に初演され、繰り返し再演されてきた舞台を自ら映画化しました。

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そしてこの映画のお楽しみのひとつが、懐かしい香港映画やスターのネタがたっぷり入っていること! クリスティと中古レコード店に勤めるティンロが出会う場面に登場するのはウォン・カーウァイ監督の『花様年華』のポスターで、ティンロが愛するスターはレスリー・チャン。私自身は当時それほど熱心に香港の明星たちを追いかけていたわけではありませんが、ウォン・カーウァイ監督の登場はやっぱり衝撃的で、20代で初めて香港を旅したときは『恋する惑星』に出てくるエスカレーターや重慶マンションに足を運びました(同世代あるある、ですよね!?)。劇中でものまねされる、香港四大天王のひとり、レオン・ライの『ラヴソング』も大好きな映画です。エンディングで流れるレスリー・チャンの歌声に耳を傾ける頃には、親密な女友だちが増えたような、頼もしい気持ちになっているはずです。

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PROFILE

細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
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