大切なシャツはクリーニングではなく自宅で洗う


「真新しい白いシャツの輝きを、いつまでも保っていたい!」と思うのは誰も同じ。
とはいっても、洗濯を繰り返すうちにその輝きは失われ、クローゼットにしまっていたら知らないうちに黄ばんでいた、なんてことも。襟まわりに皮脂汚れが残って黒ずんでくると、もうお手上げです。
“シャツは消耗品”と割り切っていても、お気に入りのシャツは少しでも長く着たいと思うものです。そこで、ワイシャツは必ず自分で洗濯しているという松屋銀座の紳士服シニアバイヤーである宮崎俊一さんのこだわりの洗濯術をうかがいました。
 

 

ネットに入れて洗うと汚れがよく落ちる


「仕事上、常にスーツを着ているので、お客さまから“ワイシャツは自分で洗っているのですか?”という質問をよくいただきます。クリーニングに出してボタンが割れてしまったり、生地が傷んだりした経験のある方が、私はどうしているのか気になって質問されるようです。
ワイシャツは、自宅で洗ってアイロンするのが基本。手間はかかりますが、クリーニング店によっては、強力なプレス機で一気にアイロンがけをするため、生地はもちろんボタンがすぐに痛むので、特にお気に入りのシャツや高価なシャツは自宅で洗ってください。洗濯機で水洗いするほうがきれいに仕上がり、確実に長く着続けることができます。
洗濯するときのポイントは、裏返してからたたみ、洗濯用ネットに入れて洗うこと。皮脂汚れが付いた部分がネットにこすれて汚れが落ちやすくなります。ネット1枚にシャツ1枚が基本。ボタンは必ず全てはずしてください。水の流れでシャツが膨らみ、破れてしまうことがあるからです。こうして洗うと、普段よりも汚れが落ちたのがよくわかり、かなり満足度が高いはずです。
ちなみに、シャツの脱水時間を1分にして干すと、アイロンがいらないくらいにシワがのびるのでおすすめです。ドラム式の場合の脱水は3分くらいが目安です」
 

衿や袖口の頑固な汚れにプロがおすすめする最強の石鹸


「襟や袖口の頑固な汚れを落とすのに、私が20年以上愛用しているのがウタマロ石けんです。ドラッグストアなどで販売している固形の洗濯石けんで、頑固な皮脂汚れを落とすスグレもの。襟や袖の汚れだけでなく、化粧品の汚れや靴下の黒ずみも落としてくれます。
汚れた部分を濡らしてから、ウタマロ石けんを塗って、しっかりともみ洗いしたら、あとは水で流さずに洗濯機で洗うだけ。ただし、蛍光増白剤が入っているので、色落ちしそうなシャツの場合は目立たない部分で試してから使ってください。
普段は裏返してネットに入れて洗う手順を実行し、汚れのひどいときだけウタマロ石けんを使うのが宮崎流です」
 

クリーニングに出したのに変色?! その原因は?


「忙しくて自分で洗えない、という方もいらっしゃると思います。その場合は、クリーニング店を利用していただいても構いません。ただし、シャツの白さを保つためにご注意いただきたいことがあります。クリーニング店から引き取ったら、すぐにビニールをはずす、ということです。
“クリーニングに出してから保管していたのに、着ようと思ったら襟が変色していた!”という経験はありませんか? 変色の原因は、ドライクリーニングでは落ちない汗汚れと、クリーニング溶剤が完全に乾かず繊維に残っているから。ビニールをはずしたときにフワッと香る石油系の匂い、それがクリーニング溶剤です。一見すると乾いているように思えるのですが、クリーニング店ではどんどん仕上げていかなければいけないので、完全に乾く前に搬送用のビニールをかけてしまうのです。
クリーニングから戻ってきたシャツは、ビニールカバーをすぐにはずして、風通しのよいところで2~3日陰干しをしてください。しっかりクリーニング溶剤を乾燥させなければ、変色の原因になります。特に夏はビニールに湿気がこもり、さらに部屋の湿気や温度もこもって、いいことはひとつもありません」
大切なシャツには、ほんの少し手間をかけて長く愛用する。おしゃれを楽しむためのテクニックとして、プロが実行しているテクニックを真似してみましょう。


宮崎 俊一(みやざき・しゅんいち)
1965年北海道生まれ。1989年株式会社松屋入社。98年より紳士服バイヤーとして活躍。独学でイタリア語を習得して生地の買い付けに出向き、国内の仕立て職人とともに作る「丸縫い既製スーツ」が人気を集め、イタリア製スーツを凌駕するその品質の高さはアパレル業界を驚愕させた。現在はIFIビジネス・スクール、青山学院大学、首都大学東京、東京経済大学においてファッションビジネスのカリキュラムで講師を務める。毎日新聞の連載、ファッションセミナーなど幅広く活動している。著書に『成功する男のファッションの秘訣60』『成功している男の服選びの秘訣40』『ビジネススーツを格上げする60のルール』(講談社)がある。

 

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宮崎 俊一 著 1300円(税別) 講談社

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(この記事は2018年5月27日時点の情報です)
構成/角田多佳子


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