米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

The Weinstein Company / Photofest / ゼータイメージ

2015年のアカデミー賞で話題になった作品『世界にひとつのプレイブック』は、当時試写状やパンフレットのデザインも好みだったので、期待度はかなり高めに観ました。

「爆笑がいつしか大粒の涙に変わる、共感度NO.1の感動作」というコピーにも惹かれて、友だちを誘って観てみるのによさそうな作品だな、と思っていたんです。でも、「この人たちの物語を通して、監督は何が言いたかったの」というのが観終わったときの正直な感想でした。

主人公は妻の浮気で心のバランスを崩してしまったパットと、夫を事故で亡くしたちょっと風変わりな女性、ティファニー。描かれるのは、心に傷を抱えたふたりの出会いや、パットが同居している両親との暮らしです。

躁うつ病を患っているパットはいきなりパニックになって窓から物を投げたり、夜中に騒いで両親を困らせたり。私自身は病気が身近にないからか、そういうシーンから大変さや重みを感じることができなかったのかも。
パットのような精神状態に悩まされたり、克服した経験がある人が観たらどんな感想を持つのかな? という興味はわいてきましたね。

夜のダイナーでなぜかシリアルを注文する場面とか、日本人にはちょっぴりわかりづらいユーモアも入っていて、いわばアメリカ映画らしいアメリカ映画。自分にフィットする作品ではなかったけれど、世間で評判のいいものが自分の好みに合うかどうかを自由にジャッジするのも、映画の楽しみ方のひとつだと思います。

『世界にひとつのプレイブック』
妻の浮気で精神状態を崩したパットは相手の男を殴ってしまい、妻に接近禁止命令を出されることに。すべてを失い両親と同居しながら社会復帰を目指す彼は、近所に住むティファニーという女性と知り合う。アカデミー賞では作品賞など8部門で候補に。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2013年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。