半年ほど前に、友人からLINEのやり取りの中でがんであることを告白されました。「今は気持ちに余裕がないのでそっとしておいて欲しい」と言われ、「抗がん剤治療が落ち着いて、気分が良くなったら連絡ちょうだいね」と返信したきり会えていません。ひと月後のLINEでは普通のやり取りをしましたが、クリスマス、新年はスタンプのみの返信になり、つい先日の送信には返事もないままです。どこまで立ち入っていいものか、私は必要とされていないのか、と胸が締めつけられる思いです。どのように接してあげるべきなのか、アドバイスをお願いいたします。(54歳)

ご友人がいつでも声をかけられるように
窓を開けておいてください。
ご友人ががんとのこと、苦しいですよね。私は夫や友人をがんで亡くしたこと、そして終活ジャーナリストという仕事柄、多くの人から病気の相談も受けてきました。が、病気のことをカミングアウトするというのは、ご本人にとって本当に重い問題だと理解しています。なぜかと言うと、人間関係が壊れてしまうからです。こう言いますと、かなだっべさんは「私は変わらない」と思われたかもしれませんが、少なくともご友人のことを労われていますよね。その労るという行為が、ご本人にとってはもうこれまでの関係性とは違っているのです。病気になった本人は、その環境を受け入れるのがとても大変なのです。だからカミングアウトを悩まれる……。とくにミモレ世代の女性は、結婚していたり独身だったり、子供がいたりいなかったり、働いていたりいなかったりと、環境が様々です。そういった違いを飛び越えて友達として付き合い続けるというのが、なかなか難しい時期でもあります。それだけに、病気を打ち明けるのも葛藤がありますし、打ち明けた後も「やめておけばよかった」と揺れ動く人もいらっしゃいます。
同時に打ち明けられた方も、「友情は変わらないよね?」ということを病気の友人から突きつけられているのです。かなだっべさんの今の状態が、まさにそうだと思います。そしてこればかりは、突きつけられてみないと、自分がどうなるか分かりません。それゆえ、かなだっべさんの苦しみも、お察しいたします。
そこで「どのように接してあげるべきか」というご相談に対しての、私の考え方をお伝えしたいと思うのですが……、何よりもまず「〜してあげるべき」と考えないでほしいと思うのです。少しきつい言い方になってしまって申し訳ないのですが、その考え方は自分が主体になっているからです。LINEの返信がないということは、ご友人の今の心境は、つまりそういうことなのだと思います。もしかしたらご友人の中では、もうakiaki_minさんとの友人関係は終わり、となっているのかもしれません。ただしそれは「今」の心境。この先また、「やはり話がしたい」と変わるかもしれません。すべては、ご友人に選択権があるのです。
私の夫は病気が分かってから、ほぼすべての人間関係を断っていたのですね。そこには、「弱い自分を見せたくない」、「重荷を背負わせたくない」など、様々な理由がありました。でもそれは、そのときの思い。本当の際になったとき、「やはり会いたい」と思うようになった人もいて、夫は「人の気持ちは不思議なものだね」と言っていたものです。かなだっべさんが今、ご友人の中でどういった場所にいらっしゃるのかは分かりません。ですが気持ちは変わっていくものですから、そのときご友人がかなだっべさんに声をかけられるよう、それとなく「気にしている」という連絡を送るなど、ご友人が気軽に連絡できるように“窓”はいつも開けておいてほしいと思うのです。
- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
どこまで立ち入っていいのかという思いと
必要とされてないのかという思いで、揺れています。