想像もつかないペースで社会が変化している今、常識と思われていたことや、価値観や正義も変わろうとしています。決して悪いことばかりではなく、画一的な“これがオンナのシアワセ”という価値観が崩れつつある今は、自分で自分のシアワセを決められる時代、とも言えます。人生100年時代に向けて、今気になる社会の動きやニュースを人気ジャーナリストがピックアップしてご紹介する新連載がスタート! 
今回は、カルチャーや社会現象に造詣が深く、鋭く切り込む文章にファンの多いライター渥美志保さんがミモレ初寄稿。渥美さんが驚いた「家計調査」の数字とは……。

「働くお父さんと、専業主婦のお母さん、そして子供二人」は標準世帯?

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新しいドラマが始まるタイミングの7月、井浦新好きの私は『健康で文化的な最低限度の生活』を楽しみにしているのですが、びっくりしちゃいますよね、テーマが生活保護で、ヒロインが役所の福祉課職員だなんて。私が大学生くらいの頃、ドラマのヒロインと言えば、家賃メッチャ高そうなオシャレ部屋に住み、不釣り合いなブランド品を山ほど持っているみたいな感じだったわけで……日本の失われた30年に思わず遠い目。

にしてもドラマってほんとに時代を映す鏡だわ、と思うのは「総世帯数の5%にも満たない『標準世帯』」というニュース。日本で一番多い世帯構成は「仕事してない一人暮らし」で、3番目に多い「仕事してない二人暮らし」と合わせると全体の30%を越えるんだとか。ほんとにびっくら。これ絶対におじいちゃんおばあちゃん世帯だけではないはずです。

さてこのニュースでさらにビックリしたのは、「標準世帯」についての真実です。

「標準」って「広く一般のありかたとして示されるもの」で、平均的とか一般的とか普通といったイメージとして語られるものですね。この「標準世帯」というのもまたそんな感じで、税金や保険料の一般的サンプルを算出する時に、「標準世帯ではこれくらいになりまーす」という具合に使われるモデル世帯のこと。構成は「働くお父さんと、専業主婦のお母さん、そして子供二人」。

確かに4人って偶数で座りがいいし、特に子供二人が男女だったりするとバランスもいい感じで、なんか「普通のシアワセな家族」っぽい(雑な言いぐさ)。広く一般へのアピールが目的のCMの世界でも、“家族でこれ使うとシアワセになるよ~!”的イメージを刷り込みたい!という商品――吉田羊のメリット、小西真奈美のファブリーズ、長澤まさみのカルピス、発足当初の白戸家、クレラップも両親とおかっぱふたり姉妹――に登場するのは、結構4人家族が多いんですね。

確かに私の周りにも――あらっ、あんまりいない?私の生まれた世帯も違うし、私の姉妹たち、父方のいとこたちにもいない。母方のいとこにはかろうじてひとつ。普段交流のある友人たちの中を見回してみると、未婚、離婚、離婚2児、既婚子ナシ、既婚1児、既婚4児……ほ、ほとんどいないかも。あ、一組いた。そのくらい。
実は私たちがなんとなーく「普通」と思わされている標準世帯が最も多かったのは、昭和50年前後のことで、現在は全体の4.6%なんだとか。つまり20世帯に1つ以下。

大人げなく、己の思考に「ひざカックン」


話しは全然変わりますが、小さい頃からいたずらっ子だった私は、40代を越えた今もその根を深く残し……なんてシャレた書き方してしまいましたが、早い話がまったく変わらず生きています。その大人げなさの象徴が、隙を見るとどうしてもやりたくなっちゃう「ひざカックン」。ビシッと立っていた相手が、へなへなかっくんとなり、でもへなへなしちゃったせいか「なにすんのよ!」的なエネルギーの爆発ができず、ついへらへらしちゃう、みたいな感じがどうにもこうにも大好き。

そんななので周囲に「普通の大人になれんのか!」と叱られることも多くすみませんとその場では(その場では?)謝ったりもするのですが、でもふと「普通ってなに?」と思ったりもします。さらなる疑問は、彼らがいう「普通になる」は、「骨の髄まで普通」かしら、それとも「普通に見えること」かしら。てか、普通って多数派ってことでしょうけど、どの多数派? 会社員、とか、一人暮らし、とか、結婚、とか、A型、とか?どれ?どれなの? 周囲は私に、どう普通になって欲しいの? でも世の中の普通を自認する人って、「それが普通でしょ」とどこか上から目線だったり、かと思えば「私なんて普通だし」と自己卑下したり、その両方がまぜまぜになってややこしかったりで、私そのどれもやりたくないんですけど!

こうしてある程度まで思考がてんぱってくると、私は己の思考に「ひざカックン」するようにしています。世の常識から自由になれる、なんかアホくさ、と思えるひざカックン。普及したいわあ。そもそもね、多くの人が「普通」に属してるなんて、それ自体が幻想なんじゃないかしら。たった4.6%の「標準家族」みたいなもので。