バルト三国は合唱やコーラスがとても盛んな国々です。リトアニアにはスタルティネスという輪唱スタイルが伝統的にあったりと、歌が生活に密着しているように見受けられます。独立に繋がる活動にも「歌う革命」が3国ともに広まり、武器を使わず歌声を通して自由を願いました。リトアニアの人々は歌の力を特別に感じているのでしょう。歌の祭典には国民の半数以上が何らかの形で参加するというのですから、彼らにとって本当に大切な一週間になるのでしょう。

私が祭の絶頂を体感したのは、最終日の7月6日、この日は独立記念日でもあります。会場のヴィンギオ公園(ヴィリニュス)に近づくと、民族衣装に身を包んだ人々が最高の笑顔で行進しながら入場していきます。西日に照らされ、美しい衣装に身を包んだ人々の誇りに満ちた表情は、堂々と喜びに溢れていて何ともエネルギッシュ。旧市街から会場まで4kmほどパレードは続いたそうで、昼間に街で見かけた旗手たち(各地区の代表たち)は、その後歌い手たちを引き連れてここまでやってきたというわけです。

歌唱のプログラムが始まる頃には公園内は人でいっぱい、歌う人も、歌わない人も、今日はここにみんな集まれ!という感じで、ステージに上がらない人たちも歌を一緒に口ずさんでいます。会場が野外公園なので、その開放的なイメージと人々の高揚感、幸福感に包まれて、普段よりもやけにエモーショナルな気分になるのです。
それぞれのチームで歌う楽曲のジャンルも異なるのですが、リトアニアで人気のポップスのスターシンガーの曲あり、国民的音楽家のチュルリョーニスの合唱曲あり、バラエティーに富んでいて、誰でもが楽しめるように構成されています。

 

何よりリトアニアらしい粋なプログラムは、全世界にいるリトアニア人たちと一緒にリトアニア時間21時に一斉に国歌を歌う、というもの。舞台の上にある大モニターに、北米や他のヨーロッパ各国にいるリトアニア人たちの歌う様子が映し出され、舞台の上の人々の声と重なりました。リトアニアは小さな国だけに、国民同士の絆、郷土愛はとても深く、歌の祭典は遠くに住むこの国の人々の心にも強く響くのでしょう。

 

国民のための、という印象の強いこのお祭りですが、こうして遠くから来た他所者の私も、この場で彼らと一緒に歌に包まれたことは大きな幸せでした。彼らの歌に、平和な日々への願いが強く込められているからでしょう。フィナーレで花吹雪が舞う中、歓喜の声と共に手をふる人々の姿は、生きる力に充ち満ちていて眩しいほどでした。

\リトアニアはこんなところ/

 

人口 281万人
首都 ヴィリニュス
面積 65000㎢
国教 主にカトリック
言語 リトアニア語
通貨 ユーロ(2015年から)

【日本からのアクセス】
直行便はなく、成田・名古屋・関西空港から、ヘルシンキ経由でヴィリニュスまで毎日就航。乗り継ぎ含め12~13時間程度。

 

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