「&インクルージョン」を付け加える理由


海外のダイバーシティ推進においては「ダイバーシティ&インクルージョン」という風に、個がありのままに受け入れられ、尊重されるといった意味合いで「&インクルージョン」が必ず付け加えられる。

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このインクルージョンの部分を進めるうえで重要になってくるキーワードが「心理的安全(サイコロジカルセーフティ)」というもので、ありのままの自分を認めてもらえていること、人と違ったことを言う・すること、周囲に助けを求めるといったことに恐れを抱かずにできることなどを指す。

心理的にこうした安心感を抱いている人は、働くモチベーションや会社に対するエンゲージメントが高いということを示す論文があり、米Googleもチームの生産性を上げるのはチームメンバーの構成よりも心理的安全が確保されていることが重要であるとの分析結果を発表している。

鶏と卵議論ではあるものの、多様性の確保のためにハラスメント対策を、そして多様性が確保されればハラスメントは減っていくのではないだろうか。


2 Inclusive Leadership and Employee Involvement in Creative Tasks in the Workplace: The Mediating Role of Psychological Safety“Carmeli, Abraham; Reiter-Palmon, Roni; and Ziv, Enbal (2010)

 

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<著書紹介>
『上司の「いじり」が許せない』

中野 円佳 著 800円(税別) 講談社

中野さんが「いじり」について取材を始めたきっかけは、2015年12月に自殺した高橋まつりさんの事件からでした。自殺する2カ月前からツイッターで、仕事のキツさや上司に言われた言葉についての悩みを吐露していた大手広告代理店の新入社員。本書では、日本でおそらく初めて職場における「いじり」について真っ正面から向き合い、実態調査し、問題提起をしています。「いじり」の被害者はもちろん、「自分も加害者かもしれない」と思い当たる節のある多くの方に手に取っていただきたい一冊。


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中野円佳/ジャーナリスト
1984年生まれ。東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。大企業の財務や経営、厚生労働政策を取材。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に通い、同研究科に提出した修士論文をもとに2014年9月『「育休世代」のジレンマ』を出版。2015年4月より、株式会社チェンジウェーブを経て、フリージャーナリスト。厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。現在シンガポール在住、2児の母。女性のスピークアップを支援するカエルチカラ言語化塾、海外で子育てとキャリアを模索する海外×キャリア×ママサロンを運営。東京大学大学院教育学研究科博士課程。