今週末からお盆休みという方も多いでしょうか。ミモレ編集部も交代で夏休みをとります。久々に長めのお休みがとれる!となると、感性をみがきに、美術館やアートイベントへ行こうとネット検索するのですが、先日、ショックな本を読みました。

美術評論家の椹木野衣(さわらぎのい)さんのエッセイ集『感性は感動しないー美術の見方、批評の作法 』。数々の大学の入試問題に採用され、現国の受験参考書の定番なんだそう。

本のタイトルにもなっている巻頭の「感性は感動しない」では、岡本太郎さんの言葉を引用して


感性をみがくという言葉はおかしいと思うんだ。
感性というのは、誰にでも、瞬間にわき起こるものだ。
感性だけ鋭くして、みがきたいと思ってもだめだね。

(『強く生きる言葉』岡本太郎)

とのっけからガツーン。出鼻くじかれまくりマクリスティ。

椹木さんはさらに続けます。

「感性などみがこうとしないことだ。いま書いたとおり、感性とは『あなたがあなたであること』以外に根拠を置きようのないなにものかだ」

“いま書いたとおり”の前には、感性の根拠を作り手に預け、感動の源泉をわかりやすい理由(作者の経歴や描写の技などの知識や技術)にもとめようとしがちなことを批判されていました。

とくに、ひえ~と打ちくだかれましたのは、

「最近やたらオーディオ・ガイドとやらが発達して、美術館に行くと、みなヘッドフォンをかけて絵を見ている」

 

え? だめなの?

「あれはいったい、本当に絵を見てることになるのか。肝心な絵のほうが、解説を聞くためのイラスト風情に成り下がっていはしないか」

と椹木さんは辛らつです。

あわわわわ。こちらは、サンフランシスコのMOMA美術館へ訪れた際の写真なのですが、オーディオ・ガイドに本当に振り回された鑑賞でした。

MOMAのものは、絵の前に立つと自動的に音声が流れる、というハイテクオーディオガイドだったのですが、私がもらった機種がどうもバグっていて、ぜんぜん違う作品の解説がむちゃくちゃに流れる。でも英語だし、美術の知識もないから、途中まで(っていうかほぼ最後まで)聞いても、あれ、これ、違う絵の話じゃないかしら? いやそうかも? ぜんぜん違うやーん! ということを繰り返し、カウンターに戻って交換してもらったら、ちゃんと流れて、一からやり直し。徒労……。

 

この本には、絵の見方、味わい方がたっぷりと解説されています。かたまりで見ること、感想は言わない、売り文句を疑ってみる、など私が思っていた美術鑑賞が打ち砕かれて、いちいちへえ~と思いました。

あまりに感化されたので、椹木さんのトークショーにも行ってきました。実は、私、トークショーに参加するまで、椹木野衣さんという名前から女性だと勝手に思い込んでいて(乃南アサさんとか原田マハさんみたいな感じに勝手に想像していました)、カジュアルなおじさんが出てきてびっくりした(失礼!) すみません。でも予備知識も先入観もなくただ受け止めるってことが実感できました(汗)。

トークショー中「絵を前に考えるな、考えるのは原稿にするときだけ」とおっしゃってたのが一番印象的でした。

映画を見るときも、本を読むときも、今度やってみようと思いました。かたまりで受け止めて、考えるのは原稿にするときだけ。

お盆休み、何を見に行こうかな。みなさんもよいお盆を~♪

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