「これから」の社会がどうなっていくのか、100年時代を生き抜く私たちは、どう向き合っていくのか。思考の羅針盤ともなる「教養」を、講談社のウェブメディア 現代ビジネスの記事から毎回ピックアップする連載。前回に引き続き、経済評論家であり、『お金持ちの教科書』でお馴染みの加谷珪一さんの記事をお届けします。
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが、採寸用ボディースーツ 「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を活用した服の定期配送サービスに乗り出した。採寸スーツを使って自身のサイズを計測すれば、自分に似合う洋服が定期的に送られてくる。
一連の取り組みはユニクロを攻略するためのものといわれているが、もっと大きなポテンシャルを秘めている。それはショップ系ブランドの衰退と月額固定料金化へのシフト、そしてアパレル産業のテクノロジー化である。
アパレルの常識がひっくり返る
スタートトゥデイは2月15日、服の定期配送サービスである「おまかせ定期便」をスタートした。すでに配布を始めている採寸スーツ(予約が殺到したことから、遅延が発生している)を用いて体のサイズを自動的に計測。
予算や好みの柄といった追加情報を入力すると、自分に合った洋服が定期的に送られてくる(採寸スーツがなくてもサイズを入力すればサービスを利用できる)。利用者は気に入った商品だけを購入することができ、不要なものは返送すればよい。
同社はほぼ同じタイミングで、独自ブランド商品の販売も開始している。
「ZOZOTOWN」はこれまでECサイトとしてビジネスを展開しており、各メーカーの服をWebサイトで販売するのが主な業務だった。あくまでECサイトの運営企業なので、メーカー各社とは直接の競合にはなっていなかった。
今回、同社が独自ブランド商品の販売を開始したことで、一部のメーカーとは直接的に競合することになるが、ZOZOがターゲットにしているのは言うまでもなくユニクロである。独自ブランドの第一段として販売を開始したのは、Tシャツとデニムというベーシック系の定番商品であり、ユニクロのラインナップと完全にぶつかる。
業界では、ZOZOがいよいよユニクロに勝負を挑んできたと受け止められているが、今回のZOZOによる一連の取り組みには、もっと大きなポテンシャルがあると筆者は考えている。それはショップを基盤とした従来型ブランドの衰退とアパレル産業のテクノロジー化である。
これまでアパレル業界では、店舗を押さえることが勝利の方程式であった。著名デザイナーが手がけるデザイナーズ・ブランドは別として、ユニクロのような企業は、店舗を基盤にブランドを展開し、そこで自社商品を販売していくというのが定番であった。
店舗(ショップ)において自社商品以外も扱うかどうかで、いわゆるセレクト・ショップとは区別されるが、いずれにしても店舗網を使った販売力が利益の源泉となっている。
これはオンワードに代表される伝統的なアパレルメーカーにとっても同じことである。ユニクロのような店舗展開は行っていないものの、こうした従来型メーカーは百貨店の売り場をしっかりと押さえている。
ファッション雑誌などでCMを展開して告知活動を行い、店舗を使って商品を売ることを基本にしているという点では、ユニクロと何ら変わりはない。
アパレル業界が店舗を基盤にしていた最大の理由は、服のサイズ合わせである。他の商品とは異なり、服は実際に着てみないとサイズが合うのか分からない。いくらネット通販が発達しても、店舗を軽視できなかったことには、こうした背景がある。
Comment