皆様は映画に何を求めますか? ラブコメ映画でキュンキュンしたい? アクション映画で爽快感を味わいたい? SF映画で現実ではおこりえないことを追体験したい? ヒューマン映画で思いっきり泣きたい?……
映画館で映画を観るのが好きです。日常と切り離された状況で、上記に挙げたような映画の世界にハマッて現実逃避したいというのもその理由ですが、私の場合は、その逆に「現実で起こっている問題を直視したい」という理由も確実にあるな、と。
というのも、先週、ネイティヴアメリカン保留地を舞台にした映画『ウインド・リバー』を観た後に、今年観た映画ベスト3をぼんやり考えていたら、フロリダの安モーテルで暮らす母子の日常を切り取った『フロリダ・プロジェクト』、アメリカの閉鎖的コミュニティを舞台にした『スリー・ビルボード』、日本社会の隅に置き去りになった人々を描いた『万引き家族』……
今のところ自分が脳内で候補にした作品は、すべて社会に問題提起をしている映画だということに、はたと気づいてしまいました。
『ウインド・リバー』が描くアメリカ先住民・保留地の壮絶なる実態は、今まで私がまったくもって深く理解していなかったアメリカの現実をまざまざと見せつけてくれました。
実態はコチラに詳しいです>>>何が少女を殺したのか? 『ウインド・リバー』が突きつけるアメリカ先住民・保留地の壮絶な実態 (Real Sound)
上記に挙げた各映画それぞれに私が感じたことは割愛しますが、いろいろな社会問題を抱えているけれど、時に映画はそれらに対する自己批判的な視点をしっかり内包する良心が機能しているところ。そして、これらの映画は、絶望的な気持ちになってしまう重い問題を優しさで包みこみ、最後はひとすじの希望を見せようとしてくれるところが素晴らしいな、と。エンターテイメントの力を借りて、現代社会が抱える問題をできるだけ多くの方に届けたいという監督をはじめとしたスタッフの方々の熱く繊細な思いを感じ取らずにはいられません。
その意味で、改めて『万引き家族』は、日本の希望である、と思うわけです。
意図せず長くなってしまいましたが、最後に是枝監督の発言をいくつか紹介して終わりにしたいと思います。
(朝日新聞インタビューより)「犯罪者と自分は全然違うという感覚こそ危険であり、善と悪を単純に切り分けることに警鐘を鳴らすのが創作」「むしろ犯罪者と自分は全然違うという感覚が広がっている現代社会は、とても危険だと思います」「分かりやすく語ることが重要ではない。むしろ、一見分かりやすいことが実は分かりにくいんだ、ということを伝えていかねばならない」
(ご自身のブログより)「『大きな物語』に回収されていく状況の中で映画監督ができるのは、その『大きな物語』(右であれ左であれ)に対峙し、その物語を相対化する多様な『小さな物語』を発信し続けることであり、それが結果的にその国の文化を豊かにするのだ」
今日のお品書き
9月に公開される映画「寝ても覚めても」の原作者、柴崎友香さんインタビューが公開されています。自分で選び、自分で決断する人生にするために、必要なことを語っていただいています。SNSとの向き合い方が変わるかも⁉︎
Comment