米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

【シネマコレクション・31】<br />女性が主人公だから見やすい硬派なサスペンス『ゼロ・ダーク・サーティ』_img0
Columbia Pictures / Photofest / ゼータイメージ

ビンラディンを追い詰めたCIAの女性分析官、マヤが主人公の『ゼロ・ダーク・サーティ』。ひとりの女性がものすごい執念と信念で、ビンラディンの居場所を細かく調べあげる過程を描いたサスペンスです。

何年にもわたる捜索活動を追っていくのですが、最初は「この人、本当に大丈夫!?」と心配になるほど頼りない雰囲気のマヤが、アルカイダの自爆テロで大切な仲間を失う経験を通してたくましくなっていく。

その変化を演じたジェシカ・チャステインの演技にとても説得力があって、なかなか真実にたどり着けないもどかしさや苦悩が痛いほど伝わってきました。
捜査に疲れ果ててチームを離れていく人のエピソードもあって、CIA内のチームのつながりや人間関係もしっかり描かれています。

念入りな取材をもとにしたというだけに、細部までリアリティが感じられるし、爆破シーンや潜伏先に踏み込んでいくシーンの臨場感と緊迫感はさすがハリウッド映画。ターゲットを見つけ出したのにどこか虚しさをにじませたマヤの表情には、簡単には割り切れない複雑な後味も。

女性が主人公だから、こういう硬派なタイプの作品が苦手な人にも、ぜひ観てほしいと思います。

『ゼロ・ダーク・サーティ』
巨額を注ぎ込みながら、突破口を開けずにいたビンラディン捜索の切り札として投入された、CIAの情報分析官マヤ。天才的な感覚と執念で居場所を突き止めていくが……。監督は『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2013年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。