国立成育医療研究センターが2018年に発表したデータによると、2年間で92人もの女性が産後1年以内に自殺をしています。その背景には「産後うつ」に悩む女性たちの苦しみがあるとされています。

第一子を出産後に「産後うつ」を発症した経験を赤裸々にブログで綴っていたミィさんもそんなひとり。幸いにも自殺にまでは至りませんでしたが、出産後1カ月を過ぎた頃から不眠に悩み、じわじわとうつの症状が出はじめ、「苦しみから逃れたい」「生きていたくない」と自殺の予行演習を繰り返していたそうです。

苦しい状況の中でも「母親なんだから」「周りのお母さんはきちんと子育てしている」と自分に言い聞かせながら育児を続けていましたが、不眠や聴覚過敏になるなど症状は悪化するばかり。「死にたい」から「死ぬしかない」へと気持ちが大きく傾いたとき、ミィさんは「死にたい!」と家族に訴えました。そこでようやく家族は深刻な状況であることを理解し、専門医のところに駆け込んだのです。ミィさんは緊急受診を経て即入院。「産後うつ」に対する適切な治療を受けたことで命を落とさずに済みました。
 

 

「産後うつ」になりやすいのは、どんな人?

 

ミィさんはなぜ「産後うつ」を発症してしまったのか? 様々な要因が考えられますが、その最大の原因は、女性ホルモンの急激な変化にあると女性のうつ病の専門医である「あいクリニック神田」の西松能子先生は話します。

「胎児を育む働きをもつエストロゲン(女性ホルモン)は、妊娠から出産にかけて分泌量が増えますが、出産を境に激減します。しかし脳や体がその変化に対応できないと、自律神経がバランスを崩し、それが原因で不安や孤独を感じやすくなったり、イライラしたりするなど心が不安定になります。
また、産後は母親なのだからと自分を追い込んだり、周囲からの自分を犠牲にしてでも子どもに尽くすべきというプレッシャーを受けやすく、うつの症状が出ても気づきにくく、悪化させてしまう人が多いのです」

では、どんな人が産後うつになりやすいのでしょうか?

「〇〇だから産後うつになりやすい、という性格や傾向はありませんが、うつ病になる人の多くは、几帳面で一生懸命な傾向があります。だからといって、必ず産後うつを発症するわけではありません」

 

「もう限界」と思ったら、自分を甘やかしてもいい

 

産後の心や体に異変を感じたら、まずは自分の体調を回復させることが第一です。「もう限界」となるまで自分を追い込む前に、疲れやイライラを感じたら、心と体を休めましょう。

お母さんにも休息は必要です。「母親なのに自分を優先させるなんて……」といった思い込みは捨てて、ゆっくり休んでリフレッシュしてください。そのためにも、妊娠中から頼れるサポーターを探しておくことが大切です。

疲れやイライラ、落ち込みには「心地いいと感じること」をするのが効果的です。説明のつかない不安や焦燥感があるときは、ウォーキングやジョギングなど、一定のリズムで体の筋肉を動かす有酸素運動をすると、脳の神経伝達物質のひとつである「セロトニン」が活性化し、ポジティブな気持ちが湧いてきます。

それでも苦しいときには、ひとりで悩まずに専門医に相談を。「産後うつ」は、うつ病です。他の病気と同じように、早期発見・早期治療をすることが大切です。
 

ミィ
大学卒業後6年間会社員として勤務し、結婚。2014年に第1子を出産後、産後うつ病を発症し、3カ月間精神科病院に入院。産後9カ月で寛解。同じような状況の女性の助けに少しでもなればと、その経験を〝ミィ〟というハンドル名で漫画エッセイ風にブログで綴り、産後のメンタルの不調に悩む女性たちの間で評判になっている。 

『脱 産後うつ 私はこうして克服した』
著者 ミィ 1200円(税別) 講談社

不眠、自殺未遂、入院……「産後うつ」の苦しみから脱した著者による実録コミック&エッセイ
第一子出産後「産後うつ」を発症し、自殺未遂の末に精神科病院に3カ月入院した経験のある著者が、「産後うつに関してきちんとした知識があれば、もっと早めに手を打つことができたし、ここまで悪化することもなかった」という後悔の念から、今苦しんでいる女性のために、自らの発症から寛解までの経緯を、四コマ漫画とともに綴ったエッセイ。育児に悩み、苦しむ著者のリアルすぎる内容に対する専門医の解説付き。悩める読者必見の一冊。

『脱 産後うつ 私はこうして克服した』のほか、料理、ファッション、ダイエット・美容など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
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出典元:https://kurashinohon.jp/577.html

(この記事は2018年10月27日時点の情報です)
構成/角田多佳子 イラスト/ミィ