今シンガポールに住んでいるのですが、海外の方と比較すると日本の女性は皆さん綺麗にされている方が多いなぁと感じます。たとえば幼稚園の送り迎えに行くだけでも、園の雰囲気にもよると思いますが、お化粧もばっちり、服装もちゃんとしている。

一方、シンガポール人やこちらの生活が長い方々は、短パンにTシャツなどのラフな格好が目立ちます。暑い上に足がすらりと綺麗な方が多いこともあるかもしれませんが、ビジネス街でも生脚です。シンガポール人だけではなく欧米系の方も、お化粧は薄いかあまりしていない気がします。

私自身について言えば、もともと化粧への関心は異常に低く、ファッションは最も苦手な分野の一つ。そんな私がファッションサイトで連載を書かせていただいているのも皮肉なものなのですが、20代後半くらいまで、本気で「どうせ落ちるなら化粧してもしなくても変わらなくない?」と思っていました。

メイクは絶対に必要? 外見を気にしすぎない発想でラクになる_img0
 

たとえば、誰かと食事に行くときに口紅をするという感覚がわからなかった。おそらく30分後にはカップに口をつけ、食べ物を食べたら、今塗った口紅はほぼカップか口の中に入って、ほとんど残らないよな。だったらつけていく必要なくない?という論理です。…紅を引いてヨシっと気合いを入れるという感覚も、待ち合わせしてその日会った瞬間に「すてきだな」と思ってもらおうという感覚もない!

そういう私なので、シンガポールに来てから、少し歩くと汗だく!すぐ化粧落ちる!ということで、もともと超時短だったお化粧もほとんどしなくなりました。

もちろん日本のファッションのレベルが高いことは素晴らしいことだと思います。今年の夏に酷暑の日本に帰ってふと思ったのは、日本は「化粧が落ちるから化粧をしない」という発想じゃなくて、「じゃあ落ちない化粧品を作ろう!」「化粧直しのためのグッズ」という方向に進んで色々と開発を進めてきたのだろうし、それが消費を喚起する側面もあるだろう、と。私みたいな干物女ばっかりじゃ経済も盛り上がらないですよね。

ただ、シンガポールに来て思うのは、そもそも多様な人種の方がいて、人の外見についてとやかく言ってくる雰囲気がないので気が楽なのかもしれない、ということです。『上司の「いじり」が許せない』という本に書いたのですが、日本の学校や職場では容姿、服装など外見が、からかいの対象になることが非常に多いと感じます。均質性が高いこともあり、見た目で悪目立ちしないようにという同調圧力や「世間の目」を意識しやすい気がします。

スクールカーストじゃないですが「イケてる」人たちが優位で、そうでない人たちが劣等感を感じる……という必要はない。とりわけ女性だけが、必ずしも見た目が関係ないような領域においても外見が整っていること、美しくあることを常に求められる環境があるとすれば、そんなの本人が重視したければして、したくなければしなくてもよくない?と疑問を呈したいです。

私も、たまにはお化粧もオシャレも楽しみたいという気持ちはあります。友達の結婚式やテレビ出演の機会をいただけたときなど、プロのメイクさんにメイクしてもらうのを楽しみにしています。ただし、最初の頃は「普段どうされていますか?」「どういう風なのがいいとかありますか」とか言われてしどろもどろだったのですが、最近は「普段は…何もしてません」「髪の毛は起きたときのままです」などと開き直っています。

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以前、ファッション誌の撮影でメイクさんに普段のメイクについて聞かれて正直に答えていたら横にいたスタイリストさんが「中野さんおもしろいー!」とめちゃウケてました。おもしろがられるレベルのファッションに対する感度の低さ。これもありだよね、と。振り切ると、いろいろ楽になりました。