世界的なスターの不思議なハイテンションと、東大卒の美女タレントがハートを作りながら言う「だぁーい好き!」と言う言葉に、どう反応したらいいのか思案する例のルーペのCM。こんな細かいものを見る時に便利だよ!の例が、男性にとっては英字新聞なのに、女性にとってはセルフネイルで、まあそれはそれである種の真実でないことはないけれど、菊川怜(言ってもうた)が「きゃっ!」と言いながらそのルーペの上に座ってしまうミニスカートのお尻のカットがあることで――さらにそれを何連発もやる第二弾CMが登場したことで――典型的な「そういう扱いなワケですか」とわかる、例のCM。

写真:shutterstock


これをこのコラムでどうやって扱おうかなあと思っていたのですが、とはいうものの「あのね、婦人だって英字新聞くらい読むから」とか言うのも芸がないので、まずは私の父の話をしたいと思います(なんで)。

昭和10年代生まれの私の父は「昭和のオッサン」の典型で、家の中のことはほとんどしないのですが、「男のすることじゃない」と意志を持っているわけではなく、「する」と言う発想自体がないというか、幼い頃から自分はただ座っているだけで必要な物事はベルトコンベアで運ばれてくるので、運ばれてこないものはきっと必要のないもの!みたいに能天気に思っているところがあります。それどういうことかというと、例えば。食事中にテレビに夢中になってしまい、箸でつかんでいた芋の煮っころがしを文字通り転がして、洋服を汚してしまったとしましょう。転がった芋の煮っころがしは必要ないもの、必要ならば誰かが拾うだろうから、自分では拾わない。洋服についたシミもふき取るのが必要なら、「ダメじゃないの」と言いながら誰かがふき取るし、着替えが必要なら誰かが用意してくれるもので、誰もやってくれなければ、平気でそのまま出かけてしまいます。

父は私が物心ついた頃からこんなタイプなので、昔から周囲は非常に振り回されてきたのですが、家族がなによりもイライラさせられるのは、現在これに付き合わされてしまうのが年老いた母であることです。特に今、その父にいら立っているのは同居している姪っ子――私の姉の娘、つまり父にとっての孫娘で、こうした状況に戦う気満々。父親の一挙手一投足に「じいじ、それはやらない約束でしょ!」と怒る怒る。私は別居しているからこその身勝手な鷹揚さゆえに、さらに父が20歳そこそこの姪っ子に叱られるのもなんとなく哀れに思えて、まぁそれほど目くじら立てずともという具合に、「わあ、怒られた(笑)」とかなんとか茶々を入れてその場を和ませてしまうわけですが、この間はそうした私の態度を、こんな感じで叱られました。


「そうやって笑いにすると、ウケたと思って全く反省しないからやめて」


孫娘が父親を叱るそのこと自体の是非を問うのはさておき、姪っ子のこの言葉は非常に的を射ているなと、ある意味ものすごく感心してしまいました。父はいわゆるお調子者で、周囲に笑いが起きれば受け入れられたと思ってしまうタイプ――ここでもまた「昭和のオッサン」の典型です。私が笑いでごまかす行為は、姪っ子の怒りを骨抜きにしてしまうことに他なりません。その犠牲者となるのはほかでもない、父の被害者たる母です。

さて例のCMについて、私は再び考えます。あれを「ウケる」と笑ってしまうことはある種の承認――つまりあそこで描写される「そういう扱い」が(こちらの気持ちとは無関係に)許された、受け入れられたという「昭和のオッサン」的判断がなされることなんじゃないか。それはどこか、「会社で肩を揉まれた」「部長とチークを踊らされた」「下ネタに付き合わされた」「“機嫌が悪いのは月に一度のアレかな”と言われた」とか言う時に、「も~、やめてください、部長ったら(笑)」みたいに対応したがために、そういうことが常態化し、「向こうも喜んでた」みたいな話にされてしまうことと似ています。悪ノリが過ぎる第二弾は、まさに「ウケた」から登場したものに他なりません。
そういう時に「(世代に限らない)昭和のオッサン」は、本人に、さらに周囲に、「シャレが分かんない女だなあ」と言ったりしますが、それは次なる罠のようなもの。さも「シャレが分かる」共犯者を上位に置くことで、「シャレの分からない(つまり怒った女性)」を貶める――的な構図に付き合わされることはありません。怒るのも大人げないしと思うなら、ソフトバンクのパロディCMの堺雅人よろしく、「何やってるんですか」と冷や水を浴びせるのが一番。

とはいえ、そんなことをして何の得があるのか。我が家の話で言えば、姪っ子の戦いは功を奏するのか。この年齢まできた父が、果たして変わるのか。これが意外に、そこそこ効果があったりするからオドロキです、ホントの話。「今更何も変わらない」と諦める前に、是非お試しください。

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