類稀なスタイリング力を育てたのは「フリマ通い」と「古着販売経験」だった

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古着屋のオーナーが教えてくれた
「服の表現方法はかっこいい、
可愛いだけじゃない」


よく通っていた古着屋「ZOOL」でちょうど販売員の募集があったのですぐに応募。配属された代官山店は、貸し出しの窓口でもあったので、販売だけでなくプレス業務も担当していました。このZOOLのオーナーには、ヴィンテージに関する知識はもちろんのこと、本当にいろんなことを学ばせてもらいました。
ある時オーナーに言われたんです。ちょうどそのころ全店舗のディスプレイも担当していたんですが「NIMUのスタイリングはかっこいいか、可愛いだけ。時には面白いとか、悲しいとかそういうのがあってもいい。パリッとしたものではなくゆるいものが着たいから古着を選ぶこともあるんだから、ハンガーを曲げて猫背にしたっていいんだよ」って。もう衝撃を受けました。服の表現方法ってこんなにもあるんだ、って今でも心に残っている言葉です。

スタイリストを目指そうと思った時、自分のカルチャーにないジャンルも好きになりたかったから、だとしたら“ギャル”だなと。『ViVi』の中で一番スタイリングが好きだった白幡さんにアプローチしました。ちょうど募集していたとこともあって、割とすんなりアシスタントにつくことはできたのですが、それからの2年間は毎日必死。よく師匠が「あれ、どうなった?」「あれ、どこにある?」っていつも「あれ」で指示するんです(笑)。白幡さんを完璧にアシストしたいと思っていたので、すぐに答えられるようにいつも師匠と同じ頭でいなければと、今思えば一番集中力を使っていたし、エネルギーのいる毎日でしたね。

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28歳で独立したとき、師匠がやっていた『ViVi』や『GLAMOROUS』からすぐに声をかけていただいて、スタイリストとしてスタートを切ることができました。新人だったのに仕事をいただけることがありがたくて、どんなページも精一杯やろうと無我夢中でしたね。雑誌の特集だけでなく表紙やタレントやモデルのスタイリングまで幅広くやらせていただき、多くの経験を積むことができました。でも、そのうち頑張りすぎて時間的な余裕がなくなり、心のバランスを崩してしまって。やる気があるからこそ可愛いものを作って欲しいという期待に応えられるのかというプレッシャーがすごくて。泣きながら仕事をすることもありました。

 

出産して長らく続いた産後うつ
ルーツだった古着さえ嫌いになった


走り続ける毎日にやっとひと呼吸つけたのは『GLAMOROUS』が休刊したタイミング。そのころ子供を授かり出産したわけですが、私の場合、産後うつがひどくて2〜3年続きました。今まで着ていたものがイヤになり、ルーツだった古着さえも嫌いに。自分が分からなくて、本当に大切なものはなんだろう?って毎日考えていました。コンサバなおしゃれをして、定番と言われるシンプルなニットを着てみたけど、全然似合わないんです(笑)。私じゃないなって。今思えば「母親になったのだからきちんとしなければいけない。好きなものに突っ走るのではなく地に足をつけなければいけない」って“理想の母親像”になろうとしていたんだと思います。

ようやく、その暗闇から抜け出せたのは、実は今年に入ってからなんですよ。古着屋で働いていた20代の頃はターコイズや石のアクセサリーが似合わなかったけれど、今つけてみたら日焼けしてシワの入った私の手にしっくりくるんです。「やっぱりヴィンテージが好きだし、私に似合う。好きなものは好き、それでいい」、そう思えるようになりました。

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「昔憧れていた石のリングやゴールド系のリングが今ようやく似合ってきました」。旦那さんとお揃いというロレックスの時計。結婚記念日に、二人がいいと思える“夫婦のスタンダード”を毎年買うのが約束だそう。
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フォルテ フォルテのワンピースに合わせたのは、8年前に買ったクロエのニーハイブーツ。「全然履いてなかったんです。ずっと持っていたらヴィンテージになると思って、ようやく出番がきた。寝かせていてよかったです(笑)」

 

 

今度はフリマで“待つ側”に。
すべては今につながっている


ここ最近は毎シーズン、フリマをやっているんですが、それが今すごく楽しいんです。お客さまがキラキラした目で「これ可愛いですね」って話しかけてくれて、いろんな会話ができる。ものを売りたいというより、ただ話すことが楽しくて(笑)。昔は“探しに行っていた側”なのに、今は“待つ側”にいるなんて…フリマが原点で古着屋で接客の仕事からファッション業界にに入りましたし、振り返るとすべては繋がっているんだなと。オンラインでも服を買えるこんな時代だからこそ、接客がしたいって思うようになったんですね。

いつか子供が独立した頃に、夫と二人でお店をはじめて、服にまつわる物語やこんなふうに着たら可愛いよねっていう話を、たくさんの人とできたらいいなと思っています。

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クロスモチーフのネックレス(左から2つめ)は初めて買ったヴィンテージアクセサリー。師匠の白幡さんにもらったターコイズのブローチ(中央)など、どれも思い出深いものばかり。

 

スタイリストNIMUさんをもっと深掘り!

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NIMUさんが楽しみにしているというフリマが11/10(土)に開催予定。詳細は、インスタnimu_1021をチェック!


撮影/目黒智子
ヘアメイク/大山恵奈
取材・文/昼田祥子
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