「LGBT」 について日本でもオープンに語られることが多くなったとはいえ、杉田水脈議員の「生産性がない」発言などが象徴するように、誤った認識や差別・偏見があるのも事実。「カミングアウトは必要じゃない。だけど、隠す必要だってないでしょ?」と語るのは、「オープンリーゲイ」の歌人として活躍する鈴掛真(ずずかけ・しん)さん。先月、発売になったばかりの話題の新刊『ゲイだけど質問ある?』では、「いつゲイだって自覚したの?」「ゲイからノンケになることはあるの?」「ゲイって心は女なの?」「友達や家族からカミングアウトされたら」……など“ソボクな疑問”という名のややいじわるで不躾な質問にも、正面から誠実に答えたQ&A集になっています。
「知らない」より、「知っている」ほうが、きっといい――そんなLGBT入門を、今日から4回連載でお届けします。

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鈴掛真(すずかけ・しん) 歌人。1986年愛知県生まれ。名古屋学芸大学メディア造形学部卒業。短歌結社「短歌人」所属。第17回 髙瀨賞受賞。広告会社でコピーライターとして3年の勤務の後、作家として本格的に活動をはじめる。「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」をセオリーに、ブログ・Twitterなどで作品を随時発表中。著書に『好きと言えたらよかったのに。』(大和出版)がある。

 

同性愛者は、すでにみなさんの身近に必ず存在している


こんにちは、鈴掛真です。5・7・5・7・7のリズムで作られた短い詩『短歌』の作家として活動しています。短歌は、平安時代から1000年以上にわたって受け継がれている日本独自の文化であり、短歌の作家は『歌人』と呼ばれています。
音楽やスポーツなどと比べて、文学、それも短歌をやっている人は少ないので、よく「歌人に初めて出会いました!」と珍しがってもらえるのだけど、僕にはもう一つ、打ち明けると驚かれるパーソナリティがあります。
 それは、僕がゲイだということ!


テレビでオネエタレントを見たり、フィクションで同性愛者が出てきたりしたことはあっても、ゲイと直接顔を合わせて話をしたことがある人は、決して多くはないですよね。そもそも、自分が同性愛者だと、日常的にオープンにしている人が少ないから。東京のような都会ならまだしも、地方都市や田舎であれば尚のこと。

かつては僕も、ゲイだということを隠しながら、ごく普通の会社員として生活していました。会社を辞めて作家デビューすることになった時、短歌だけでなく、ゲイという個性を活かしてエッセイやコラムも書いていきたいと思い、意を決して世間にカミングアウト。晴れて、家族にも友人にも仕事相手にも、同性愛者だと隠さない『オープンリー・ゲイ』となりました。

近年『LGBT』という言葉をニュースで目にする機会が増えました。これは4種類のセクシュアリティ(性的指向)、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字を組み合わせたもので、同性愛者などのセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称です。2015年、東京都の渋谷区が、国内の自治体としては初めて、同性カップルにも結婚に相当する権利を与えるパートナーシップ証明書を発行すると発表したことで、日本でもその認知度が急速に向上しました。
けれど、どうでしょう。みなさんはLGBTを身近に感じていますか?
「同性愛者って、どんな人たちなんだろう?」
「どんな生活を送っているんだろう?」
「異性愛者と何が違うんだろう?」
セクシュアル・マイノリティについて知ってみようと思っても、直接LGBTに話を聞いてみるのは、なかなか難しいですよね。その一方で、渋谷区、世田谷区を皮切りに、パートナーシップ宣誓制度は全国の自治体へ着々と広まっているし、LGBTへの理解を表明する企業や学校も増えています。それに伴って、これからの日本では、僕のようにオープンな同性愛者がもっと現れてくることが予想されます。みなさんの職場や、学校のクラスで、隣の席に同性愛者が座る日は近いかもしれません。

いいえ、今、隣の席に座っている人や、あなたの家族が、同性愛者ではないと言い切れますか?

周りが異性愛者だと決めつけているだけで、本人は同性愛者であることに人知れず悩み、異性愛者のふりを強いられているかもしれません。LGBTは、既にみなさんの身近に必ず存在しているはずなんです。


そこで僕は、今回の企画【ゲイだけど質問ある?】を立ち上げました。
みなさんが同性愛者に対して抱いている様々な疑問や質問に、オープンリー・ゲイである僕が答えていくことで、少しでもLGBTへの理解が深まれば、と考えたのです。
近い将来に必ずやって来る、身近でLGBTと接する機会の心構えに、『LGBTの入門書』として活用していただけたらと思っています。
この記事が、みなさんと同性愛者との架け橋になりますように。

 
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