いつゲイだって自覚したの?


異性しか好きじゃなかったはずなのに同性を好きになってしまうことを、『目覚める』なんて表現しますよね。ゲイの間でも“いつゲイだって自覚したの?”という意味で「いつ目覚めたの?」なんて訊き合うことがあります。
同性愛者は、いつ、どんなふうに自覚すると思いますか? いつか誰でも目覚める時が来るんでしょうか!?


僕がゲイを自覚したきっかけ


同性愛に目覚める瞬間は、人によってまちまちです。少年期に漠然と考えるようになる人もいれば、大人になってから急に自覚する人も。
 
僕はといえば、目覚めたのが特に早かった方だと思います。なにしろ、幼稚園に上がる頃には既に自覚していたんだから。えっへん!
決定的だったのは、1989年に放送された『高速戦隊ターボレンジャー』。スーパー戦隊シリーズの中で、ヒーローたちが初めて高校生だけで構成された、今で言うところのイケメン俳優たちが活躍する作品でした。その中で、ブラックターボが廻し姿で相撲をとるエピソードがあって、幼い僕は、お兄さんの裸体にくぎ付け!
当時、僕はまだ3歳。エロガキじゃねえか。
そして、幼稚園でのこと。幼少期の男児は、まだ恋愛感情がなにかも解らないなりに、若い女性の先生のことが好きだったり、同級生の女の子と遊ぶのを恥じらったりするものですよね。ところが、僕が通っていた幼稚園には、若い男性の先生がいて、当時の僕は確実に男性の先生のことも好きでした。しかも、なぜか察しがついていたんです。「きっと他の男の子は、僕みたいに男の人を好きになったりしないんだ。きっとこれは、他の誰にも言っちゃいけないことなんだ」ってね。
 
その察し通り、それから10年以上もの間、僕は同性愛者としての自覚を、自分だけの秘密として胸の内に留めることになります。今考えると、性の芽生えが妙に早くて、妙に空気が読めていた子どもだったみたい。


いつか誰でも目覚めるのか、否か


僕のように、ゲイであることを幼少期に自然と自覚するケースは、かなり珍しいような気がします。そもそも日本では、同性愛という概念について知る機会が、あまりにも少ないから。
「男性は女性と結婚し、仕事の稼ぎで家族を養うもの」
「女性は男性と結婚し、子どもを産んで育てるもの」
性別にとらわれない多様な生き方が認められ始めたとはいえ、現代の日本には、まだまだこうしたジェンダー意識が根付いています。そのため「同性愛という概念がこの世にはあり、それが自分の周りに存在し、そんなことがまさか自分にも起こり得る」なんて、ほとんどの人は意識すらしないまま一生を終えます。
 
僕の場合、父がシステム・エンジニアだったので、我が家には早い段階でWindows95のパソコンとインターネットが導入されました。中学生だった僕は、ネットで調べ物をしているうちに、同性愛者はこの世にたくさん存在していること、そんな人たちを『ゲイ』『レズビアン』と呼ぶことを学び、自分のセクシュアリティがゲイであると確信しました。


一方で、普通に結婚して、妻子があるにもかかわらず、同性愛に突然目覚めちゃうケースも!
以前、ネットの某掲示板に【父の不倫相手が義父だった】というエピソードが投稿されて、ちょっとした話題になりましたね。投稿者の女性が結婚して、子宝にも恵まれたのだけど、突然ご主人の両親が離婚することに。原因はなんと、女性の父親とご主人の父親が同性愛に目覚めて不倫していたから! 結局、女性の両親も離婚して、お父さん同士が幸せに暮らすことになったんだとか……。

このように、ゲイとして生きてく上で肝心な『目覚めるきっかけ』は様々です。魅力的な同性が目の前に現れた、同性の裸に体が反応してしまった、同性に告白された、ターボレンジャー、などなど。

「じゃあ私の彼氏もいつかゲイに目覚めるかもしれないってこと!? そんなのイヤッ!!」と心配になってしまった女性のみなさん、一旦落ちつこうか。誰もが同性愛に目覚める可能性がある、というわけではありません。

目覚めるとは、『持って生まれた自分の要素に気づく』ということ。そもそも要素がゼロなら、目覚めようがありません。問題は、要素の有無です。
逆に言えば、要素があるなら、いくら誤魔化して異性と付き合っても、結婚しても、同性愛者としての要素を拭い去ることはできません。これは自分でも、ましてや他人がどうこうできる問題ではありません。目覚めちゃったもんは、しかたない。

むしろ、持って生まれた自分の要素に気づけるのは、喜ばしいことだとも言えます。無理に自分を否定せず、目覚めた自分を受け入れることで、それまで知る由もなかった、新しい幸せの形が見つかるかもしれませんよ。
 

『おっさんずラブ』は夫にも? 誰でも“目覚める”可能性はある?_img0
 

『ゲイだけど質問ある?』

鈴掛 真 著 1500円(税別) 講談社

すぐそばにある「LGBT」が身近になる世の中へ、の入門書!

「カミングアウトは必要じゃない。だけど、隠す必要だってないでしょ?」最近よくきく「LGBT」だけど、まだまだ知らない人が多い。
Q.何人に1人がゲイなの?--A.100人のうち3人と言われてます!
Q.いつゲイだって自覚したの?--A.幼稚園にあがる頃!
Q.同性愛って趣味なんでしょ?--A.それは大きな間違い!
Q.アウティングってなに?--A.セクシャリティに関して本人の意思に反して他人が勝手に暴露すること。
Q.腐女子ってどう思う?--A.いいと思うけど……
「知らない」より「知ってる」ほうが、きっといい――そんなソボクな疑問に「オープンリーゲイ」の歌人として活躍する鈴掛真が答えます!

第2回「息子がゲイだった……親として大切なことは?」はこちら>>
第3回「ゲイがノンケになって女性と結婚はあり得るの――偽装結婚を生む日本社会」はこちら>>
第4回「「ゲイって気持ち悪い」日本にもある“無自覚な”同性愛差別」はこちら>>

 
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