“達筆すぎる”と一躍話題となった、中谷美紀さんの直筆の結婚報告ですが、「“私”や“私こと”を小さく書いて、行のはじめに置かない」「固有名詞を2行に分けない」「“は・が・を”が行のはじめにこないように改行する」など、文面も手紙のマナーを知らないと書けない内容! 「まさに才色兼備」「マナーわかってる!」と巷でも絶賛の嵐です。
手書きの手紙を書く機会が激減したいまだからこそ、手紙のマナーを知っていると、ビジネスでもふだんのお付き合いでも、中谷さんのように一目置かれる存在になれるかもしれません。
そこで、知っているだけで手紙の“格”が上がる基本マナーを、手紙に関する書籍を多数執筆している中川越さんの著書『実例 大人の基本 手紙書き方大全』からご紹介します。
 

 

意外と知らない! 手紙の書き方の基本マナー

「が・に・は・の・を」は行頭を避ける

このマナーは、最近ではほとんど顧みられていませんが、「が・に・は・の・を」などの格助詞を行頭に置かないようにすると、相手がとても読みやすくなります。「……すばらしい贈り物頂戴し……」などといった文を、「……すばらしい贈り物」と行末に書き、「頂戴し……」を行頭に書くのではなく、「……すばらしい贈り物」と書き、次行は「頂戴し……」から書き始めるといった具合です。
書きながら調整して、行末に格助詞が来るようにしても、相手はあまり気づかないかもしれませんが、なんとなく読みやすい手紙にはなるはずです。気づかれない親切こそが、本当の親切かもしれません。
 

人名・数字・熟語は2行に分けない

手紙の大切な使命の一つは、正確な情報伝達です。したがって、誤読を避ける配慮は欠かせません。そこで、人名・数字・熟語など、ワンセットで意味をなす重要な単語は、行末と次行の行頭に分断することを避けるのがマナーとされています。
人名や熟語は分断されると誤読の可能性が高くなり、数字はとくに読みちがえやすくなります。薬の調合量や値段や時間を2行に振り分け、誤読を誘発させるようなことがないようにします。
 

エンピツ書きは失礼。安価なボールペンもNG

エンピツは下書き用の筆記具ですから、これを手紙に使えば失礼と思われます。消せるので証拠能力もありません。手紙を書くときの筆記具は、筆、万年筆、つけペン、あるいは、インク漏れやカスレのない高級なボールペン、もしくはパソコンなどを用います。フェルトペンや安価なボールペンは、改まった手紙には向きません。
 

フォーマルな手紙のインクの色は?

フォーマルな手紙のインクの色は、黒かブルーブラックが正式です。そして墨を使うときには、結婚式などのお祝いには濃い墨を用い、葬儀などの不祝儀では、薄い墨で書くのが常識です。薄い墨を使うのは、悲しみのあまり硯(すずり)に涙が落ち、墨が薄められるから、という説があります。もちろん、友人同士のパーティの招待状なら、思い切り派手な色を何色も使い、楽しい雰囲気に仕上げるのもよいでしょう。
 

便箋は薄い色が上品。社用箋の私用はダメ!

祝儀、不祝儀は必ず白い便箋を用います。改まった手紙は、内容に限らず、すべて白が無難です。改まった手紙でも、多少親しみや趣(おもむき)を込めたいときには、色のついた便箋でもかまいませんが、薄い色で白に近いもののほうが、上品な印象となります。
原稿用紙やレポート用紙を便箋代わりにするのは失礼です。いずれも下書き用の用紙だからです。また、たとえ正式な便箋でも、会社ロゴの入った社用箋を仕事以外で使用するのは禁物です。
 

便箋は1枚でもいいってホント?

便箋が1枚で終わってしまうときは、1枚だけを封筒に入れます。かつては、便箋が1枚で終わってしまったら、白紙の便箋をもう1枚添えて出すというマナーがありました。諸説ありますが、縁起が悪いという理由だそうです。今でも稀にそうする人がいますが、1枚で非常識と思う人は、ほぼいないといってよいでしょう。
 

宛名だけ最後の便箋に書いてはいけない理由

何枚か便箋を書いて、最後の便箋に、日付、自署名、宛名だけを書くことは避けます。最後が相手の宛名だけになってしまうことも、もちろんいけません。不体裁な印象になり、失礼を感じさせることがあるからです。書きながら調整して、少なくとも最後の便箋に本文の2、3行がかかるようにします。
 

テープで封をするのは失礼。ノリできちんと貼る

せっかく趣深い季節の便りを出しても、封締めがホチキスやテープでは、興ざめです。多少時間と手間がかかっても、封締めはノリで行います。ていねいにノリづけされた封を開けるとき、先方にこちらの時間と手間が静かに伝わり、趣や敬意がよりいっそう深まります。
 

手紙の基本マナー、あなたはいくつ知っていましたか?
“マナー”といっても、こちらの意図を正しく伝えるためのツールでもあり、相手を思いやる気持ちが形になって表れたものととらえれば、そう難しいものではありませんね。
マナーを知って、手紙美人(美男子)になりましょう!

中川 越(なかがわえつ)
1954年、東京都に生まれる。雑誌・書籍編集者を経て、執筆活動に入る。古今東西、有名無名問わずさまざまな手紙から手紙のありかたを研究、多様な切り口で執筆した手紙に関する書籍は数十冊に及ぶ。著書のほか、東京新聞でのコラム「手紙 書き方味わい方」、NHKのテレビ番組「先人たちの底力 知恵泉」「視点・論点」への出演などを通じて手紙の良さを紹介している。 著書には『夏目漱石の手紙に学ぶ 伝える工夫』(マガジンハウス)、『文豪たちの手紙の奥義』(新潮文庫)、『結果を出す人のメールの書き方』(河出書房新社)、『気持ちが伝わる手紙・はがきの書き方全集』(PHP研究所)、『完全 手紙書き方事典』(講談社+α文庫)など多数がある。

 

『実例 大人の基本 手紙書き方大全』

著者 中川 越

できる大人として知っておきたい、一生使える手紙の文例集が一冊に!
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構成/石澤あずさ

出典元:https://kurashinohon.jp/856.html

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