エストニアのヒーウマー島に来ています。エストニアの首都、タリンの港からフェリーに乗って1時間半、この国で2番目に大きい島にたどり着きます。
冬至が近づくこの時期は、一年で最も日の短い時、日照時間が少ないというのは、フォトグラファーの私にとってはなかなか厳しい撮影条件なのです。そんな中でも、むしろこの夜長感覚を楽しんで旅をしなくてはいけませんね。はい、ポジティブにまいりましょう。
それにしてもこの時間感覚、なかなか味わえないものなのです。朝は9時ごろまで何と無く暗いのです、もちろん普段起床するような7時頃は真っ暗、朝という感じが全くしません。とりあえず身支度をして出かけますが、昨晩ホテルに戻った時と何も光の状況が変わっていないので、時間が前に進んでいるのか、感覚的にわからないのです。人間も動物ですから、本能的に光の状況に反応しているのだと実感します。
晴天ならもう少し状況が違うのかもしれないのですが、周囲が明るくなったなあと思い始めた9時頃からしばらく同じ明るさで、日が昇っていく感じがあまりないのです。当然ですよね、太陽の軌跡の角度が、私の住む東京とは全く違い、低い位置で弧を描いているのですから。
12時になった頃、あ、太陽だ!と思わず声をあげたくなるような強い光が雲間から覗きました。私もフォトグラファーなので光の位置とか、高さには少しばかりこだわりがあるのですが、この光は、そのものをパッと捉えたくなる、幸運の兆しのような光でした。
短い日照時間と引き換えに、とても美しいものがここでは手に入ります。「斜めからの光」です。いわゆるマジックアワーと呼ばれる、何もかも美しくあぶり出される夕暮れ時の斜めから射す光、これが日が出ている時ほとんどの間世界を照らしています。普段はこの光が欲しくて空とにらめっこしたりしていますが、ここでは天気さえよければ、抜群の光がそこにあります。良い写真が撮れてしまいます。
午後3時を回ったら日差しは弱まり、あっという間に暗くなります。そこからは闇を体験する時間、こうなったら手に入るいろんな光を借りて撮影します。車のヘッドライトも部屋から漏れる明かりも全て生かして。でも良く考えたら、写真だけでなく、日常も同じく。あると思っていたものがなかったら、そのありがたさに気づきますが、一方でないなりの手段を考える、なんとかなるよ…。光に一つ教えられました。
取材協力 CAITOプロジェクト(田園ツーリズムプロジェクト)
機材協力 フィンエアー
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