あけましておめでとうございます。ミモレの川端です。お正月、みなさまいかがおすごしでしょうか。本年も良き年となりますよう。楽しいひとときの一助となれますよう精進してまいります。

初詣は明治神宮へ。年末は、レコード大賞、紅白歌合戦と最初から最後まで堪能し、昨日と今日は箱根駅伝にかかりきりです!CMも見逃せないわ。というわけで復路スタート前に更新。長くなりますので、最後の大学のゴールを見届けてからゆっくり読んでいただけたら幸いです。

さて、【ベストブック2018】文庫編に続きまして、ノンフィクション編を発表いたします。

鏡リュウジさんや水晶玉子さん、Keikoさん、青木良文さんなど“運勢を読み解くプロ”の方々の記事を担当し、皆さんが口を揃えて言うのが「2020年に向かって社会の価値観がガラッと変わっていく」「大きなうねりの中で固定概念を外して」ということなのです。

価値観が変わるってどういうことだろう……?って去年からずっと考えています。評論家の加谷珪一さんの記事にも「昭和的な価値観がリセットされた年」とありましたが、私の中にも昭和の価値観がしっかり染みついていて、新しい考え方もわかる、でも昔ながらもわかる、そんなハザマでモヤモヤすることが多かった年だった気がします。

2018年はそんな価値観の変化の兆しの中で、自分のモヤモヤした気持ちが言語されていてスッキリした気分になったり、読んで救われたりしたノンフィクション作品を選びたいと思います。エントリー基準は、「2018年に刊行されたノンフィクションの単行本の中から」としました。

第5位は、
レベッカ・ソルニットさんの『説教したがる男たち』

「マンスプレイニング(manとexplainの合成語)」=「男性が、女性を見下すあるいは偉そうな感じで何かを解説すること」を世に広めるきっかけとなった本。淡いグリーンの装丁も好きです。

「マンスプレイニング」という言葉自体は、レベッカさんの作った言葉ではないそう。タイトルにもなっていて、第1章で語られる「説教したがる男」=女のお前は知らんだろうけどって感じでくどくどと偉そうに語る男性への分析は、多くの女性にとって「あるある」で、男性には気まずい指摘で、一気に広まったわけなんですね。誰もがひとこと言いたい。私もあ〜わかる〜、あの人のことだわ〜、と思い浮かべちゃいました(テヘヘ)。みなさんの身近にも思い当たる人がいるでしょうか。

第2章以降は、世界で起こったレイプ事件や女性嫌悪(ミソジニー)が引き起こした銃乱射事件などが取り上げられていて、知っている事件もありましたが、多くは知らない事件でした。

女性に「偉そうに話したい欲」と「レイプや殺人」とでは大きな隔たりがあって、まとめて語るのは強引だと、男性からの著者への反論も多数あったようです。私もこれを読んだときはそう思いました。

しかし年末の印象的なニュース「著名なフォトジャーナリストで『DAYS  JAPAN』元編集長の広河隆一氏の性暴力について7人の女性が告発した」という報道が12月23日号の「週刊文春」に掲載されました。経緯と被害者女性たちへの取材は「バズフィードジャパン」のこちらの記事に詳しく載っています。

フォトジャーナリストを志し、DAYS編集部に入った女性たちに広河氏が行った卑劣な行為は、「偉そうに話したい欲」の先に「性的に支配したい欲」が直結していたと言えます。

男の人がみんながそうだとは私も思いません。でも、そういう女を下に見る欲が根底にある男性が、何かをきっかけに(権力を手にしたとか、女性にバカにされたと感じたとか…)歪んだ形で出る場合があることを知っておくのは大切だと思いました。

レベッカ・ソルニットさんは、「ハーパス・マガジン」など数多くの雑誌やウエブに寄稿する人気寄稿家であり、作家であり、アクティヴィスト(社会活動家)であり、美術にも造詣が深く、美術展カタログへの寄稿もしているそう。こういう立ち位置の書き手は日本にはあまりいないなあと思います。エピソードとエピソードをつなぎ、硬軟交えて、ときに絵画などを事例にあげながら、現象を解説してく筆力がほんと素晴らしい! フェミニズムを語りながら、全く「説教くさく」ないんです。テーマは重いけれど、読んでいて楽しい本でした。

同じくジェンダー問題の本をもう1冊。



第4位は、
小川たまかさんの『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』

性被害者の取材や支援団体にも所属するライター小川たまかさんによる記事を時系列にまとめた本。2016〜2018年にかけて起きた、セクハラ告発、女性蔑視CM、#MeToo運動などが取り上げられています。ウェブ発信の記事をベースにしているので、語り口がとても読みやすいです。事件関係者への取材の客観的な整理にとどまらず、小川さんの意見がしっかり書かれている点でも、ニュースに対しモヤモヤした気持ちが整理される本でした。

私自身、どちらかというと嫌な感情があまり表情やトーンに出ないタイプで、文句を言わないのが美徳、と思っていたところもありました。でも、最近は、例えば、職場でのやりすぎのイジりや、メディアや広告の女性蔑視的なジョークをスルーしてちゃいけないと思うようになりました。

そのきっかけとなったのは、昨年より増えたミモレの社会派な記事。私は渥美志保さんのコラムを担当してまして、渥美さんからいろんなニュースやCMについて「バタやんはこれどう思った?」「どこが不快?」「どう攻める?」とか聞かれるわけです。それで気付いたのは、女性蔑視的な発言や表現が、すごく許せないって強い嫌悪感が自分の中にあるんだなってことです。

読者のみなさんもきっと、身の回りの人間関係の中では、ネガティブな感情をやり過ごしたり、スルーしたりする能力が身についていると思うのです。でも、社会の不条理や理不尽なことに対して許せんっていう強い感情を持たれることが、最近増えているんじゃないでしょうか。

それは年齢的なことなのか、社会の変化のハザマだからなのかは私もわからないのですが。小娘ではないし、波風を立てるときは立てなくちゃ!という立場になってきたことは間違いありません。

次は全然違うテーマの本です。

第3位は、
レフ・マノヴィッチさんらの『インスタグラムと現代視覚文化論 レフ・マノヴィッチのカルチュラル・アナリティクスをめぐって』

写真論やメディア論であまり取り上げられてこなかったけれども、今や世界的な影響力のあるインスタグラムについての分析した本。2012年から2015年にかけてインスタグラムにアップロードされた約1500万枚もの画像をデータ分析した解説が圧巻です。2010~2018年の日本だけを分析した章もあります。

昨年、ソウルを訪れ、一番感じたのが「街づくりそのものがインスタ映え」。いいか悪いかは別として、ソウルは“写真映えづくり”が本当に上手だなあと思いました。

インスタグラムは、観光や外食、街づくりを変えてしまった世紀の発明ですね。

私自身、スマートフォンで「いい写真を撮りたい欲」が、ほかの何の欲より勝る瞬間は多々あって……。はしたないと思うこともあるし、何が大切なのかわからない感覚になることも。

大学のゼミの参考図書のように分厚く高額な本で、買うのに躊躇しましたけれども、買ってよかった! あっちからもこっちからも読める両開きの構成、間に挟まれるカラーの投稿写真など、非常に凝った作りで読み応えがあり、暇つぶしにパラパラとつまみ読みするたび発見があって、長く楽しめる本でした。

第2位は
菅付雅信さんの『これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講』

平野啓一郎さん、深澤直人さん、佐々木紀彦さんら各ジャンルのトップランナーたちと菅付雅信さんが語り合う対談集です。

菅付さんの切り込み方が上手なので、初心者にもそのジャンルに知識がある人にも満足感のある対談になっています。哲学から建築、経済、アートまで、サクサク読めて“知ったか気分”になれました。

この本を挙げたのは、11テーマある中で、興味があまりなかったけど読んだら面白かった章(哲学)、興味があったのに覚えてない章(デザイン)などのばらつきが自分にとって意外な発見だったからです。自分の興味って信用できないなということと、何歳になっても興味や知識欲はゆらゆら変わるもんなんだと気づけたのは収穫でした。

第1位は、
若林恵さんの『さよなら未来――エディターズ・クロニクル2010-2017』

『WIRED』日本版・前編集長の若林恵さんの『WIRED』の巻頭言を始めとした8年分の寄稿文をまとめた本。

自分が編集者になるとは想像していなかった子ども頃から、雑誌の編集長による巻頭言や巻末の編集後記を読むのが好きでした。文庫を買っても「あとがき」から読むのと同じで、そこだけ読んだらある程度満足してしまう……。

ここ最近、毎月買う雑誌が少なくなっていましたが、『WIERD』の若林編集長の巻頭言は、毎号楽しみにしている文章の一つでした。

テクノロジーの専門誌だけあって、AIとか仮想通貨とかダイバーシティを取り上げるタイミングが早くて、今読んでもぜんぜん古くない、というか私は今やっとちょっと知ったくらいのことがたくさん。

実は私、昨年、テキサスへ出張し「SXSW」へ参加した際に、若林さんとツアーをご一緒したんです。初参加だった私は、最新のテクノジーやビジネス知見に追いつかなくちゃと鼻息荒く、駅伝選手と同じスピードで走ってみる沿道の人みたいに、トップスピードでついていこうとしてたんです。若林さんは、「突っ走った先がゴールかどうかもわからない、どうどうどう、オレらはゆっくり見極めようぜ」ってな感じの(そうはおっしゃらなかったけれど、そういう風情で)矜持なきテクノロジーの迷走を解説してくださった。それは編集者として貴重な体験でした。

この著書でもっとも印象に残ったのは「最適化されてはいけない」の章。SXSWでも話題にあがった、データに基づくニュースフィードの過剰な最適化「フィルターバブル」について触れられています。過去のデータからはじき出された最適な解だけを選択する功罪。

新しい熱狂、新しい価値は、過去の「最適」からハミ出すことでしか生まれ得ないのではないか、という提言で締めくくられています。格調高い原文はぜひ本書で読んでいただけたらと思います。

私たちは学び続けないといけない。でも、学習によって最適化されすぎて、最初に感じた“違和感”や“熱量”みたいなのをそぎ落としていってはいけないのではないか、そんなことを思った一冊でした。何かにモヤモヤして、モヤっとしたままやり過ごしちゃいかんいかんと思うと読み返す本です。

新年早々、またすごく長くなってしまいました(汗)。

東村アキコさんが『東京タラレバ娘』で「東京オリンピックまでに結婚していたい」と倫子たちに言わせたのは2014年。オリンピックまで6年ありました。遠そうで近くに迫った2020年までに、なにがどう変わっていたらいいでしょうね。

このブログやミモレの記事などでの、日々のみなさんとの交流を今年もとても楽しみにしています。いつもお返事が遅くなってしまってすみません、、、。今年は、読書会も定期的にやっていきます。今年もどうぞよろしくお願いします。