編集部・バタやんによるインスタ読書会、1月22日(火)の5回目は『女ともだちのヒエラルキー』をテーマにお届けしました。わざわざ話しづらいテーマを選んでしまった、なんて言いつつ、時間が足りなくなるほどの内容を準備していたバタやん。当日はたくさんのみなさんにご覧いただき、超濃密な30分となりました!
時代の空気を切り取ってきた“女の嫉妬”50年史
まずは今回のテーマについて説明しておきましょう。「女ともだちのヒエラルキー」と聞いて、みなさんはどんな作品を思い浮かべますか?
バタやん:ひとことに女の嫉妬といってもいろいろあってですね〜。大きく分類すると
【女のヒエラルキー・5大テーマ】
①スクールカースト
②仕事か結婚か
③同級生同士の逆転
④ママ友カースト
⑤姉妹コンプレックス
こんな感じでしょうか。①から、年齢を重ねることで②、③へ連動していくこともあります。また④、⑤には美醜の問題が絡んでくることも多いですね。では次に、女同士の関係性を書かせたらこの人! という作家さんたちと作品を挙げてみましょう。
【“女の嫉妬”小説・四天王】(トーク内でご紹介した本と単行本が刊行された年)
桐野夏生さん 『OUT』(1997年)、『グロテスク』(2003年)、『ハピネス』(2013年)
林真理子さん 『葡萄が目にしみる』(1984年)
姫野カオルコさん 『整形美女』(1999年)
角田光代さん 『対岸の彼女』(2004年)、『森に眠る魚』(2008年)
錚々たるメンツですね。今日はさらにもう一つ下の世代で、“新”四天王も決めたいと思います!
【“女の嫉妬”小説・新四天王】
湊かなえさん 『夜行観覧車』(2010年)
朝比奈あすかさん 『不自由な絆』(2014年)、『自画像』(2015年)
辻村深月さん 『太陽の座る場所』(2008年)、『嚙みあわない会話と、ある過去について』(2018年)
柚木麻子さん 『終点のあの子』(2010年)『ナイルパーチの女子会』(2015年)
そのほか、新津きよみさん、深沢潮さん、真梨幸子さん、窪美澄さん、島本理生さん、唯川恵さんなどの名前があがりました。
女性の作家さんの年齢を話題にするのはどうかなとも思うんですが……、桐野さんたちが50〜60代、湊さんたちは30代〜40代。世代ごとに読み比べてみるのも面白いと思います。
今回のためにいろいろ読み直してみたのですが、そこで思ったのが“女の嫉妬は時代を映す”ということです。女性が何を羨むかが、時代の価値観の変化を端的に現しているのではないか、と。本人の価値観もそうですし、とくに「世間からこういう人が評価されていて、けれど自分はそうでないのが悔しい。なぜ自分はそこに入ることができないのか」といった気持ちが、時代とすごくリンクしていると感じました。
出会いも繋がりも、女同士の関係は時代とともに変化する
女の嫉妬心と時代との関連性に注目したバタやん、放送中に【女の嫉妬年表】を完成させました! その全貌はライブだけのスペシャル。ですが見逃してしまった方にもちょっとだけ、その内容をご紹介します。
バタやん:昔は、女性のヒエラルキーは家柄や地域などの“生まれ育ち”で決まる部分が大きかったんですね。80年代から女性の社会進出が加速、また地方から都心へ出て、生まれ育ちのヒエラルキーを逆転するケースが出てきたわけです。その代表的な作品といえば、林真理子さんの『葡萄が目にしみる』。葡萄畑が広がる地方都市で育った、著者本人を思わせる主人公が、仕事で華やかな世界に入ることで同級生たちを逆転していきます。私にとっては、物心ついた頃に読んだ中で一番衝撃を受けた作品です!
90年代には、トレンディドラマが全盛に。そんな恋愛至上主義の時代の中では“誰と結婚するか”でカーストが決まったり、はたまた逆転したり。
また、美醜によるカーストが注目され始めるのもこの頃ですね。90年代後半に書かれた、姫野カオルコさんの『整形美女』は、美人じゃないけど可愛らしい、今でいうなら“ちょうどいいブス”な女性が完璧美人を目指し、いっぽうで完璧美人はその逆を目指すお話。
2000年代に入ると「キャリアウーマンVSセレブ主婦」の関係を書いた作品が多くなりますね。角田光代さんの『対岸の彼女』は、女社長と専業主婦の関係を描いた物語。
そして年表には、赤字で『2003』の年が。これが意味するのは?
バタやん:2003年は、先日からミモレでの書き下ろし連載も始まった、酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』が大ヒットしました。“キャリアを目指すと婚期が遅れる”なんて話は、女同士のヒエラルキーにおいて80年代から続く大命題です。“勝ち組・負け組”という考え方にも時代性を感じますね。
“女の嫉妬”小説、立ち読みではここをチェック!
最後にバタやんから、女性のヒエラルキーを描いた小説を選ぶ際はここをチェックすべし、というポイントを伝授します。
バタやん:買う前に立ち読みで、小説誌などでの連載年といった“その作品が書かれた時期”をチェックしてください! 今日話したように女のヒエラルキー小説は、どの時代に書かれたかによって嫉妬の矛先も変わってきます。連載がまとめられて単行本になり、さらに文庫が出るまでにはどうしても数年かかるので、連載掲載時期をチェックするといいですよ。
もう一つは“マルチアングルか一人称か”。女のヒエラルキー小説には複数の女性が登場することが多いですが、“マルチアングル”タイプは章ごとに軸となる登場人物が変わっていく(視点が変わる)タイプ。“一人称”は一人の主人公がいて「私は〜」と語っていくスタイル。いろんな人の立場で語られるマルチアングルタイプのほうが当たり外れがありません。
このほかにも、2010年代に書かれた作品の特徴や、それまでの流れを一変させたある出来事、バタやんイチ押しの作家さんなど、盛りだくさんでお送りしました!
次回の読書会は2月12日(火)20時〜ライブ配信予定です。
テーマはまだ未定です。テーマのリクエストなどもございましたらぜひ!
この日はバタやんの発案から急遽、紹介した本をまとめてプレゼントするクイズ大会を開催しました。今後もライブならではの企画を配信していきます。どうぞお見逃しなく!
<今後のインスタライブの配信予定>
1月29日(火)20時〜【ミモレ婦人のファッション放談】セールでニットを買い足したい!(ちあっきー&バタやん)
2月5日(火)20時〜【ミモレ婦人のファッション放談】ユニクロユーの新作を着てみたい!(大森&川良)
2月12日(火)20時〜【バタやんのインスタ読書会】テーマ:未定
2月19日(火)20時〜【ミモレ婦人のファッション放談】テーマ:未定
2月26日(火)20時〜【ミモレ婦人のファッション放談】アカデミー賞ファッションチェック(さかいもゆる&大森)
取材・文/山崎恵
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