美容や健康にストレッチがいい、とはよく聞くけれど、身体が硬いし、なかなか続かなくて……。そう思っている人、多いのでは?
書籍『みんなのストレッチ』を監修し、伊達公子選手、福原 愛選手など数々のトップアスリートへの指導経験を持つほか、青山学院大学駅伝チームのフィジカルトレーナーも務める中野ジェームズ修一さんに、なぜストレッチは必要なのかを聞いてみました。

日本人は太ももが太く見えやすい


トップ選手ほど、地味に思えるストレッチを日々の習慣として大切にしている、という中野さん。今や“駅伝王者”と呼ばれるようになった青学駅伝チームも、かつては箱根駅伝の予選も突破できない弱小チームでした。ところが、中野さんの指導によって、トレーニングだけでなくストレッチをはじめとするケアも重視するようになって、故障が激減。結果として、パフォーマンスがアップしたのだそう。

「でも、運動選手ではない私たちにも、ストレッチって必要なのでしょうか?」と、中野さんに聞いてみると、驚きの答えが。

「身体が硬い人や、運動していない人ほど、ストレッチを習慣にしてほしいのです。身体の柔軟性が低下すると、脚も太く見えやすくなりますからね」

えっ、身体が硬いと脚が太くなるんですか!?

黄色人種はもともと大腿四頭筋(太もも前側の筋肉)が発達しやすいのですが、そうすると身体の前側で引っ張って歩くフォームになりやすい。普段よく使っている大腿四頭筋をストレッチしないでいると硬くなります。すると、太ももの前側が肥大したように見えてしまうのです

つまり、太ももが張って太いのは、柔軟性が足りないからだったのかも!?  ストレッチで大腿四頭筋の柔軟性をアップさせることで、本来の細さを取り戻せる可能性があるのです。

「筋肉の柔軟性が落ちるのは、歳のせいではなく、非活動的な生活習慣や運動不足によるもの。なぜなら、筋肉は運動などで積極的に動かし、伸び縮みを繰り返すことで、柔軟性を保っているからです。そこで、運動不足の人ほど、ストレッチが必要になってくるのです。ストレッチを習慣化できれば、何歳からでも筋肉の柔軟性は取り戻せますよ」
 

ストレッチには“痩せる効果”も


さらには「間接的にですが」と前置きしたうえで、「ストレッチには、ダイエット効果も見込めます」と中野さん。

「なぜなら、体の柔軟性が高まることで、日常の“生活活動”の質・量がアップするからです

“生活活動”とは、通勤や家事といった、いわゆる日常の活動のこと。私たちが一日に消費するカロリーのおよそ30%は、この日常生活での活動や運動によるといわれています

ストレッチを続けていると、筋肉の柔軟性が徐々に復活して柔らかくなります。筋肉の柔軟性が回復すると、関節の動ける範囲である可動域が広がります。それが日常生活をアクティブにしてくれるのです。もっとも身近な例は歩行。ストレッチを行うと歩行に関わる股関節や足関節(足首)の可動域が広がり、歩くスピードをペースアップできます」

アクティブな一日が送れるようになると、通勤や家事といった日常生活での活動量も自然とアップしてきます。たとえば、ちょっとした掃除の動きがキビキビしてきたり、エスカレーターでなく階段を使うことが増えたり、一駅分くらい歩くのが苦にならなくなったり。こうした生活活動での消費カロリーが増えることで当然、ムダな体脂肪も落ちやすくなる、というわけです。

「また、運動量が増えると、筋肉量が増えて“ミルキングアクション(筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことでポンプのように脚の血液循環を促し、上半身に押し戻す仕組み)”を起こすことができます。そうすると下半身のむくみも解消できますよ」

これが、ストレッチが“脚痩せ”につながる仕組み。
逆に言えば、何もしないでいると筋肉の柔軟性は低下していくため、歳を追うごとに“動けない身体”になる→筋肉量が落ちる→太りやすい身体になる、ということ。恐ろしい!

そこで、日本女性は硬い人が多いという大腿四頭筋の柔軟性をアップするストレッチをひとつご紹介します。

太もも前側(大腿四頭筋)のストレッチ

1 椅子にクッションを置き、椅子に背を向けて半歩離れて立つ。右膝をクッションに乗せ、つま先を背もたれに乗せる。
2 左膝を曲げて、両手を左の太ももに置いて体重をかけ、右脚の太ももの前側を伸ばす。呼吸をしながら20~30秒キープ。左右を変えて同様に行う。

 

このストレッチの他にも、硬さや不快感が気になる部位・伸ばしたい部位別に、柔軟性のレベルに応じて選べるストレッチが全75ポーズ紹介されているのが、『みんなのストレッチ』。肩凝り、腰痛といった症状別のインデックスもあり、自分に必要なストレッチを見つけやすい。すべてのストレッチに、二次元バーコードからアクセスできる無料動画付き。身体の硬さや、運動不足に思い当たる人はチェックしてみて。

中野ジェームズ修一

フィジカルトレーナー/一般社団法人フィジカルトレーナー協会代表理事/米国スポーツ医学会認定エクササイズフィジオリスト(運動生理学士)/アディダス契約アドバイザリー。各種トップアスリートのパーソナルトレーナーを務めるほか、青山学院大学駅伝チームのトレーナーとして指導を行っている。NHK「趣味どきっ!」でストレッチ講座番組を2年連続担当したストレッチの第一人者でもある。

撮影/林 桂多(講談社写真部)

・第2回「知らないと怖いストレッチの基本。ランニング前に必要な本当のウォーミングアップとは?」は2月24日公開予定です。
・第3回「会社のデスクで30秒でできる肩凝り・腰痛解消ストレッチ3」は2月25日公開予定です。