しばらくは恋をしていないけれど、「毎日、楽しいわよ。1人も楽しいの」と十朱さん。人生100年とも言われる時代、75歳になってもなお十朱さんのように人生の後半戦も楽しく生きるのは、どうすれば良いのでしょう?

 

「1つ言えるのは、どの道を生きても大丈夫ということ。この年代になるとわかるんだけど、どの道でも一生懸命歩んできた人とは、みんな交われるんですよ。子育てが終わった人も、仕事ばかりしてきた人も、シングルの人も……みんな“1人”に戻るみたいね。私の高校の同級生は子供も夫もいるけど、『誰にも迷惑かけずに自立して生きたい』っていうの。死ぬときは1人って言葉が、70歳を超えると身近に感じられるんだけど、それは、みんな同じなんだなと。すると、私は1人の人生が長かった。いわば、1人を楽しむスペシャリストだから強いわよね(笑)」

――孤独を楽しめるようになることは大切ですね。

「そう、孤独と自由はワンセットです。歳をとると誰でも寂しくなるものなのよ。40代の時は、まさか、こんな心境になるなんて思わなかったけどね。寂しくても、現実的な不安さえ減らしておけば、終わりまで楽しめるのよ。不安を払拭するには、健康とお金をしっかりと担保すること。別に仕事していなくても良いけど、経済の自立は基本だし、もっとも大切なのは、健康。健康を害したら生きていても全然楽しくないから」

――健康とお金ですか。

「ええ。だから、仕事は生きがいでもあるけど自立のためでもあるし、体力維持のためにも週4回はジムに行ってます。今を楽しみながらも、将来を考えながら生きています。
ただ、40代くらいでそんなこと考えるのは少し早いかもね。今の40代は100歳まで生きると思うと、まだ、半分も行ってないじゃない(笑)。過去を振り返ったり、老後の不安と向き合うよりも、今を夢中で必死で生きること。これからどうしようかって考えるのは、60歳くらいで良いの。あと、20年は前だけを見てエネルギーを燃やして、器を増やして広げて。それが人生の後半戦を生きるための、素晴らしい蓄えや財産になりますからね」

 

<書籍紹介>
『愛し続ける私』

十朱 幸代 著 1700円(税別) 集英社

芸能生活60年を迎えた女優・十朱幸代の初の自叙伝。若くして黎明期のテレビ界に飛びこみ、仕事を最優先してきた彼女の青春、昭和のスタアたちとの交友、芝居への想い、病との闘い、そして噂の恋の真実とは……。 死亡説も流れたほどの大手術を経て、75歳を迎えた今思う「孤独と自由の楽しみ方」、「美と健康のための秘訣」など、人生100年時代の知恵も充実。


写真/横山順子
取材・文/芳麗
構成/片岡千晶(編集部)
 
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