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デンマーク女性の生き方に学ぶ、本当に“ヒュッゲ”な暮らしとは

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結婚、出産を経ても働き続けるのは日本でも当たり前になってきましたが、デンマークなど北欧の国々の女性就業率は世界のトップレベルだということをご存知でしょうか?
(北欧の国々はみな同様で、スウェーデンやアイスランドではなんと80%以上です)

仕事を続けやすい環境が背景にあることも事実ですが、デンマークの女性が言うには、
「私たちはヒュッゲな生活を送ることが人生の目的。日本人のように、合わないパートナーと我慢してでも寄り添うという考え方はないのよ。ましてや結婚した相手のために仕事をあきらめるなんて考えられない」
のだそうです。制度だけでなく、彼女たちの人生への向き合い方がそもそも違うようです。

だからといって、北欧の女性たちを取り巻く仕事環境は恵まれているばかりではありません。たとえば、育休は男女合わせて32週程度(うち12週は男性のみが取れます/男性の9割が育休をとっているのはうらやましいところです)。ですから、アイスランドなどでは女性が職場に赤ちゃんを連れていくのが当たり前になっていたりします。

一方、日本の育休制度は意外と長く、育児休暇を3年まで延ばそうという施策まであります。のんびり休めるのはよいことのようでいて、女性にとってはキャリアの形成が妨げられる可能性もあります。仕事はスポーツのようにポジション争いという一面もありますから、自分がやりたいこと、やってきたことが誰かほかの人にとられてしまったら、違うことを探すしかありません。

コペンハーゲンに住む友人、マイさんの家のキャビネット。忙しく仕事をしていても、ケーキを焼き、コーヒーをいれ、キャンドルをつける。そしていつも花を絶やさない彼女は、私にとっての憧れです。photo by Anita Behrendt

美しい家に住み、日々の暮らしを大切にして、長い夏休みをとり、気の合うパートナーと暮らす。
それは決して簡単なことではありません。いろいろな制度は整っていますが、税金は高く、物価も高い。豊かな暮らしを送るにも離婚をするにもお金がかかります。だから、結婚しても出産しても、女性は仕事を続けてキャリアを積み、管理職になることを大切にしています。子育ても大事だけど、自分の人生も大事。デンマークの女性たちには、生きていくうえでのしなやかさを教えてもらいました。

これまで10回にわたって、私が考える「ヒュッゲな暮らし」をご提案してきました。
暮らし方と生き方はリンクするものです。どういう暮らしを選ぶかは、人生において何を大事にしていくかにつながっていて、決して別々ではありません。素敵な人生のために、まずは自分にとっての素敵な暮らし方を考える、という方向もあるのではないでしょうか。

PROFILE 行正り香/ゆきまさりか

高校3年時にアメリカに留学し、カリフォルニア大学バークレー校を卒業。CMプロデューサーとして広告代理店で活躍後、料理家になる。ふたりの娘と夫の4人暮らし。『だれか来る日のメニュー』、『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』ほか著書多数。サントリーのハイボールやアメリカンビーフ協会などテレビや広告などの料理も手がける。2018年には子どもから大人まで英語の基礎が学べる「カラオケEnglish」をローンチする。

 

<新刊紹介>
『行正り香の家作り ヒュッゲなインテリア』

オールカラー128ページ 1600円(税抜)/講談社刊
ISBN 978-4-06-513068-1

“心地よくあたたかい空間や時間“という意味のデンマークならではの言葉、ヒュッゲをキーワードに家づくりと暮らし方をデンマーク親善大使(2017年 日本・デンマーク国交樹立150周年)の著者が提案します。


撮影/青砥茂樹
構成/山本忍(講談社)