山田孝之に死角なし
俳優・山田孝之の動きがまったく読めない。
もともと、『荒川アンダー ザ ブリッジ』で黄色い星のかぶりものをした“星”の役を演じたり、『山田孝之の東京都北区赤羽』でフェイクドキュメンタリーに挑戦したりと、攻めた役や作品を選ぶ俳優ではあった。
ここ数年は、著書『実録 山田』の発売(13年)、俳優仲間である綾野剛と内田朝陽と12年に結成したバンドTHE XXXXXX(ザ・シックス)や赤西仁とのユニットJINTAKA(16〜17年)の音楽活動、ライブコマース企業「ミーアンドスターズ」の取締役CIOに就任(17年9月)、自身は一切出演せずプロデューサー業に徹した映画『デイアンドナイト』(監督・脚本/藤井道人)の公開(19年1月)と、俳優業以外での活動が活発になっている。
そのタイミングで、山田孝之の約5年半に密着した長編ドキュメンタリー映画『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY No Pain,No Gain』が、4月27日(土)より新宿シネマカリテで限定上映されている。個々の活動の理由を含めた「山田孝之は何を考え、どこを目指しているのだろう?」という疑問に対する総合的な答えがこの映画にある予感がする。
山田孝之が一流の俳優であることに異論を唱える人はまずいないだろう。15歳で上京し、デビューした彼は、朝ドラの「ちゅらさん」や「WATER BOYS」、「世界の中心で、愛をさけぶ」などで頭角を現す。ターニングポイントは、ヤンキー映画の金字塔『クローズZERO』シリーズで演じた芹沢多摩雄役。キレのあるドロップキックで身体能力の高さを、絶妙な間でコメディもいけることを見せつけ、それまでのイメージを打破。その後は『GANTZ』や『のぼうの城』『テラフォーマーズ』といった大作から、『乱暴と待機』『その夜の侍』『凶悪』といった作家性の強い作品まで網羅したキャリアを歩み続けながら、30歳を迎える頃には『闇金ウシジマくん』や「勇者ヨシヒコ」という、名刺代わりになるシリーズも育っていた。ミュージカル『フル・モンティ』ではダンスと美声も披露し、山田孝之に死角なし、である。
ここまでくれば、俳優としては安泰である。その後、40代に向けて出演する作品を厳選し、海外進出へ……という展開が俳優業の王道だが、それとは違う道に飛び込んでいく山田の姿がこの映画のなかにある。30歳になった日に、山田はその理由をこう語っている。
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