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刺繡と金継ぎ、心地よい日本のサステナブル

サステナブルって言葉、最近よく耳にしますね。意識したいとは思いつつストイックになり過ぎるのも性に合わない……。今回は近場に目を向けて、繡屋とサステナブルについて考えてみることにしました。

まず思いついたのは、仕立てる時に余った切れ端やサンプルなど沢山の刺繡のハギレ。

 

これらは新しい掛け軸を作るときに装飾用の裂として使ったり、接ぎ合わせて別の作品にするなど、小さいピースでも捨てることなく新しい命を吹き込まれていきます。刺繡の手間を考えると簡単には捨てられない!というのもありますが、思わぬ新鮮な組合せが生まれることもあるようです。

母の暮らしもなかなかサステナブル。年中きもので仕事をしているので、どうしても膝やお尻の生地が擦り切れてしまうことがあるのですが、たいてい羽織や作務衣に仕立て直して着続けています。ストイックでもなく「好きなもんやし、長く着たい」というその感覚は、ぜひ真似していきたい……

現存する日本最古の刺繡「天寿国繡帳(てんじゅこくしゅうちょう)」も、作られた頃とは形を変えて現代に伝わっています。元は大きな帳(部屋の間仕切りのようなもの)だったのが時代が流れるうちに散り散りになり、今は切れ端を繋ぎ合わせた額装といくつかの残闕(ざんけつ/端切れ)に姿を変えています。元の形は失っても「これは残さなあかん」という意思の繋がりのおかげで今日私たちが貴重な遺物を見ることができるのです。

こうしてみるとサステナブルって昔から身近にあり、自分で工夫する楽しさもありそう……日本のサステナブルについてさらに考察すべく、漆作家の友人、日置美緒さんのアトリエに金継ぎ体験をしに行ってきました。

陶器等の割れや欠けを漆で補修する金継ぎは、本来時間がかかるもの。最近は樹脂を使い一日で完成してしまう体験もあるようですが、彼女のアトリエでは古来からの自然素材を使った丁寧な仕事を体験することができます。

この粉はどこでとれたもの、この道具は何で出来ているのかなど、素材にまつわるストーリーを聞きながら、素材を削る、混ぜる、練る、磨く。そして道具を清める。段取りや始末も出来るだけ自分で体験してもらうことを大事にしているそうです。
 

体験を通して気がついたことは、様々な自然素材に触れることが不思議と気持ち良いこと。
そして、刺繡もそうだった!ということ。
日々触れていると忘れがちですが、絹糸も絹の生地も触るととても気持ちよいもの。プツッと生地に針を刺す瞬間も、小さな絹鳴りの音も、なんとも心地良いんです。

こうやって楽しい方、気持ちの良い方に流れていくうちに、結果サステナブルにたどり着ければ、それこそ持続可能かもしれません。素材に触れる心地良さ、あるものを工夫する面白さをもっと発見して伝えていきたいなと思いました。

日置美緒 Mio Heki
漆ジュエリー作家でもある彼女。作品もとても素敵なので是非のぞいてみてください。

 

PROFILE 長艸 歩(ながくさ あゆむ)

1987年京都市生まれ。芸術大学にて絵画を学び、卒業後は京都の老舗日本茶メーカーで販売や広報として勤務。結婚、出産を機に夫の家業である「長艸繡巧房」にて伝統的な京都の刺繡「京繡(きょうぬい)」を学びはじめる。 現在は3歳と1歳の女の子を育てながら刺繡の技術の習得と、いままで触れる機会のなかったディープな京都文化の吸収に励んでいます。 Instagram(@sica.seka)でも刺繡や文様のことを発信しています。


 イベント告知 
『繡えども繡えども』刊行記念 トークイベント開催!
京繡工芸士・長艸敏明 × ファッションデザイナー・串野真也


「日本のわざ・伝統と革新」をテーマに、 2019年5月11日(土)18時より開催されます。

■銀座 蔦屋書店
東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F
tel. 03-3575-7755

下記からぜひお申込みくださいませ。
銀座 蔦屋書店HP

※ミモレ編集部スタッフによるアテンドはございません。

 

<5月9日 刊行予定!>
『繡えども繡えども』

著者 長艸敏明
A24判 192ページ/ 講談社

長艸敏明氏は歩さんの義父。刺繡作家、京繡伝統工芸士である氏の作品集が出版されます。着物や帯のほか、季節ごとのしつらえや婚礼衣装などの祝い着、祭事の修復や復元まで京繡の第一人者である著者の“刺繡の力”を堪能できる100点を掲載。

構成/山本忍(講談社)